2013 Fiscal Year Annual Research Report
強加工ー熱処理法による低温の特異な組織形成と相平衡の解明およびその熱力学解析
Project/Area Number |
25289216
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大沼 郁雄 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20250714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 清仁 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (20151368)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 状態図 / CALPHAD / 熱力学 / 鉄鋼材料 / 相平衡 |
Research Abstract |
FeにNiやMnを添加すると,FCC構造のγ相が安定化され,純鉄のα/γ変態点(=912℃)を起点にして,α+γ2相領域が低温側に放射状に広がる.鉄鋼材料の組織制御の多くはこのγ⇒α変態が利用されているため,Fe合金のγ/α相平衡は鉄鋼材料開発における重要な基礎資料である.しかし,Feの融点(1811K)の半分(905K=約630℃)以下では成分元素の拡散が生じ難いために,正確な相平衡を実験により求めることは困難である.Fe-NiおよびFe-Mn2元系状態図における既存の相境界は,α’マルテンサイト組織中へのγの析出の有無をもって決定されているものが多く,本来のγ/α相平衡とは異なっていることが熱力学的に予測される.本研究では,Fe-Ni合金とFe-Mn合金をコンバージミリングにより強加工した後,熱処理することにより,600℃以下の低温条件下でも本来のα+γ2相組織を形成させて,低温における相平衡を実験により決定することを目的とした. 高周波溶解により作製したFe-NiおよびFe-Mn合金を,ガスアトマイズ法粉末化し.コンバージミリングにより強加工した後,400℃~700℃の所定温度で熱処理を施し,α+γの再結晶2相組織を作製し,平衡組成をFE-EPMAを用いて測定した. Fe-NiおよびFe-Mn2元系の実験により決定した600℃以下の相境界は,これまで報告されてきた相境界よりも,NiおよびMnの固溶度が大きいことが明らかとなった.マルテンサイト組織の格子欠陥を考慮したα’相の自由エネルギーを熱力学的に考察した結果,(α’相の自由エネルギー)=(α相の自由エネルギー)+(格子欠陥エネルギー(=500J/mol程度))とすると,従来のα相中のNiおよびMnの固溶度が計算結果にほぼ一致することから,既存のα/α+γ相境界が,α’+γ平衡の相境界であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実験手法である強加工-熱処理法により,鉄系合金としては低温領域における600℃以下の相平衡を正確に測定できることが明らかとなった.また熱力学解析により,従来の実験データが本来の相平衡から偏倚する原因を定量的に解明した.いずれの成果も,当初の研究目的を達成したものであり,本研究は概ね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は強加工-熱処理法が低温における平衡組織を得るための有効な手段であることが確認できた. 今後は同様の手法を用いて,(1) Fe-Ni2元系に出現することが熱力学的に予測されているL10規則相の相安定性,(2) Fe-AlおよびFe-Si2元系BCC規則不規則相の2相分離,(3) Co-Cr2元系およびCo-Cr-X3元系(X=Pt, B, Ge, Fe, Nb, Mo)における強磁性/常磁性相の相分離等の低温領域における相平衡を決定する. さらに,得られた実験データに基づき,各合金系の熱力学解析を行い,信頼性の高い熱力学データベースを構築する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実績報告書に示した通り,研究はおおむね順調に進んでいるが,多くの研究成果は昨年度後半に得られたものであるため,昨年度予定していた国際会議等での成果発表を今年度に実施する.そのため,昨年度分の外国出張旅費を今年度に繰り越したために,次年度使用額が生じている. 次年度使用額(405,690円)を本年9月にチェコのブルノで開催される国際会議TOFA2014に参加・発表するための旅費(登録料を含む)に使用する.
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