2013 Fiscal Year Annual Research Report
非整合チムニーラダー型化合物を用いた高出力熱電発電デバイスの創製
Project/Area Number |
25289222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 讓 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40261606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 慶 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70360625)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 廃熱利用 / 熱電変換 / チムニーラダー型化合物 / 非整合化合物 / 変調構造 |
Research Abstract |
チムニーラダー型化合物群のうち、母合金となり得るRh17Ge22、Rh10Ga17、Ir4Ge5およびRu2Sn3の4相に対して、アーク溶解、高周波溶解および固相反応法により単相生成条件を詳細に調べた。また、単相試料に対して粉末X線回折パターンを測定し、得られたデータに対してリートフェルト解析を行って結晶構造を精密化した。解析された結晶構造をもとに、第一原理計算により電子構造を計算した。また多結晶試料の室温以上における熱電特性を測定し、その出力因子を評価するとともに、電子構造計算の結果を踏まえて、輸送特性を考察した。 合成を試みた4相のうち、Rh17Ge22、Rh10Ga17およびIr4Ge5の3相の単相試料が得られた。これらに対して(3+1)次元の超空間群を用いてリートフェルト解析を行ったところ、いずれの結晶相も予想通りMnSigと同様な非整合複合結晶であることが明らかになった。精密化された格子定数より、これらの結晶相の正確な組成は、RhGeg (g~1.2942(1))、RhGag (g~1.6993(1))およびIrGeg (g~1.2522(1))と表される。また、遷移金属1個あたりの価電子数VECは、それぞれ14.177、14.098および14.009といずれも14以上となり、電子が多数キャリア、つまりn型化合物であることが明らかになった。 ゼーベック係数の測定を行ったところ、いずれの化合物も負の値を示したことから、実験的にもこれらの化合物がn型特性を示すことが確認された。実測された導電率より、最大の出力因子はRhGegにおいて観測され、その値は1.4mW/K2m (710°C)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは、注目した4相のうち3相について単相生成条件が明確化され、詳細な変調構造が解析されたことで、これら3相もMnSigと同様な非整合複合結晶であることが、世界で初めて解明されたことは、特筆すべき成果である。またこれらの詳細な結晶構造から電子構造が評価でき、実測された熱電特性を物性論の立場から論ずることができたことも大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2課題を重点的に推進する。 1.高出力因子実現のための組成最適化:前年度に得られた合金合成結果を元に、それらとMnSigとの固溶相を合成し、その詳細な結晶構造を解析して変調構造を明らかにする。また、得られた試料に対して、室温以上において熱電特性を評価する。 2。組織制御による熱伝導率の低減:最高の出力因子を示す合金に対して、ナノスケールで組成が揺らいだ「ドメイン分裂構造」を実現するための熱処理条件を検討する。また、それらの試料の熱伝導率を実測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 次年度は当初予定より若干多めの金属試薬を購入し、より詳細な組成検討を行う予定である。
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