2014 Fiscal Year Annual Research Report
核融合周辺プラズマにおけるアーク現象と共堆積膜中への水素同位体吸蔵に関する研究
Project/Area Number |
25289336
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
上杉 喜彦 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90213339)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康規 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90303263)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 水素同位体吸蔵 / 水素化炭素膜 / 核融合 / 窒素スカベンジャー効果 / プラズマ-壁相互作用 / リモートプラズマ / 低温周辺プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、Heliotron-DR 装置を用いた低温・低密度水素プラズマに炭素不純物としてメタン(CH4) を用いた水素化炭素膜堆積実験により、水素・メタン混合プラズマにわずかな窒素導入(QN/QH~0.05)によって炭素膜堆積が大きく抑制されることを見いだしている。得られた成果を以下にまとめる (1)重水素ベンゼンを用いた炭素不純物導入:これまで炭素不純物源としてメタン(CH4) を用いてきたが、今回、将来の昇温脱離分析(TDS) なども考慮して軽水素を極力含まない水素化炭素膜堆積とその抑制実験を行うために、炭素不純物として重水素化ベンゼン(C6D6) を用いた実験を行った結果、メタンと同程度の水素化炭素膜生成を確認した。 (2)窒素導入による水素化炭素膜堆積と重水素吸蔵の抑制:窒素スカベンジャー効果:水素化炭素膜堆積の抑制に主要な役割を果たす揮発性CN 系粒子や重水素吸蔵を抑制することが期待される揮発性ND 系分子の分圧上昇が見られる。また、これら揮発性ガス分圧変化の特性時間(10~20 分) は、装置のガス導入/ 排気系の特性時間や炭素不純物導入時の炭化水素分圧変化の特性時間に比べてはるかに長く、導入された窒素が関与する分子反応は炭素堆積膜中へ の窒素原子の拡散と膜中での揮発性分子形成が強く関係していることを示唆するものと考えている。 窒素導入量の増加につれて、重水素原子の分圧はステップ的に増加する。この分圧上昇は、ベンゼン導入に伴い重水素を取り込みながら炭素膜が形成されていた(重水素化炭素膜の形成)系に窒素が導入されることで炭素膜中への重水素吸蔵が抑制されたことを示すのもである。同様な分圧上昇が、D2(m/z=4) やHD(m/z=3) にも見られており、今後、詳細な重水素吸蔵量の評価を行い、窒素導入による重水素吸蔵抑制効果を明らかにする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温軽水素(または重水素)と炭素混合プラズマに少量の窒素ガスを導入することにより壁面に形成される水素化炭素膜の成長や膜中に含まれる水素同位体量が大きく抑制される現象の解明が進展した。得られた結果は、プラズマプロセッシング分野におけるアモルファス炭素膜やダイヤモンド様炭素膜(DLC膜)の形成・成長過程に関する知見と定性的に一致するものであり、今後、これら他分野における知見と比較することで、核融合炉における水素同位体吸蔵抑制の課題に対して大きく貢献することが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成27年度は、以下の研究を行い得られた成果を公表する。 (1)炭素不純物(メタン、CH4とベンゼン、C6H6またはC6D6)の違いによる水素化炭素膜形成/成長過程の差異を明らかにする。 (2)水素/炭素混合プラズマに窒素ガス導入することで得られる水素化炭素膜成長抑制および水素同位体吸蔵抑制効果が、気相反応と表面(膜中反応を含む)反応のいかなる化学反応がキーとなって起こるか、詳細な気相/表面分析を行うことで解明を目指す。 (3)昇温脱離(TDS)およびレーザ誘起ブレイクダウン分光法により、試料膜中への水素同位体吸蔵量の定量化をおこない、将来の核融合炉における水素同位体吸蔵抑制手法の一つとしてその確立を目指す。
|