2016 Fiscal Year Annual Research Report
コリン作動性シナプスの構築・機能化・可塑性を制御する蛋白群の解析
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25290025
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
持田 澄子 東京医科大学, 医学部, 教授 (30096341)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シナプス / コリン作動性神経 / シナプス可塑性 / 発火 / カルシウム / シナプス小胞 / アクテイブゾーン / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
「構築されたコリン作動性シナプスのシナプス活動に依存してダイナミックに変化するシナプス可塑性を担う蛋白分子の動態を明らかにする研究」のうち、平成27年度に電気生理学的・組織化学的解析を行ったアクテイブゾーンのタンパク質分子群のひとつであるCASTのリン酸化部位(serine 45)の遺伝子操作によるシナプス伝達機能変化の検討を論文にまとめて12月にCell Reportsに投稿し、査読者からのコメントに対応して平成28年3月に再投稿、6月28日に再々投稿して、更なるコメントに対応して8月2日に再々々投稿して、9月13日に掲載された。 シナプス小胞開口部位であるアクテイブゾーンでは、複数のタンパク質が複合体を形成しているが、その複合体の中心に位置すると考えられているCASTは、第45残基であるセリンが特異的にSADリン酸化酵素によってシナプス活動依存的にリン酸化を受け、シナプス小胞をアクテイブゾーンに移送する速度を遅くしてアクテイブゾーンで待機するシナプス小胞数を減少して、シナプス伝達を短期間抑制する短期シナプス可塑性という現象の一因となることをまとめた論文から、追加実験によって、CASTの発現量とリン酸化がアクテイブゾーンタンパク質の大きさを変化させ、他のタンパク質密度を制御することが確認された。 さらに、神経伝達物質放出を引き起こすカルシウムイオンを流入させるN型Ca2+チャンネルがSUMO化されるとチャンネル活性が増強されることを確認していたが、SUMO化によって伝達物質の放出が制御されることを確認して2月24日にJournal of Physiologyに投稿し、再投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画していた「構築されたコリン作動性シナプスのシナプス活動に依存してダイナミックに変化するシナプス可塑性を担う蛋白分子の動態を明らかにする研究」のうち、シナプス小胞開口放出関連タンパク質のリン酸化酵素によるシナプス機能活性化の研究課題について、CASTのリン酸化部位(serine 45)遺伝子操作によるシナプス伝達機能変化を検討した論文を完成し、Cell Reports に掲載した。 また、「シナプス活動に依存してダイナミックに変化するシナプス可塑性を担う蛋白分子の動態を明らかにする研究」のうち、シナプス小胞タンパク質のシナプス機能活性化の研究課題について、alpha-synucleinとSV2A(東京医科大学医学部助手谷藤章太)がCa2+チャネルの動態を制御してシナプス強化に関わることを見出し、平成26年にJournal of Neuroscience, 平成27年にEuropean Journal of Neuroscience に発表した。さらに、Ca2+チャンネルのSUMO化がシナプス強化に関わることを確認してJournal of Physiologyに投稿した。 平成29年度に計画していた「シナプスでの時空間的活性化と不活性化の解析」のうち、活性化が時空間的に異なるエンドサイトーシスを駆動するDynamin isoformsの機能について検討して(助手谷藤章太)、平成25年度にJournal of Cell Biologyに発表した。また、シナプス前終末Ca2濃度上昇による時空間的シナプス小胞制御を解析し(大学院生森倫範)、平成26年にMolecular Pharmacologyに発表した。さらに、Dynamin isoforms とMyosin isoformsとの活性化時間の違いの検討(医学部学生林田迪剛)から、それぞれの蛋白の機能位置と時間を推測し、平成27年にJournal of Neuroscienceに発表した。Dynamin isoformsの活性化を担うCa2+結合タンパク質の候補としてsynaptotagmin I, II の関与の検討を行い、平成29年3月に生理学会において発表した(助手谷藤章太)。
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Strategy for Future Research Activity |
強靭なコリン作動性シナプスを構築する培養ラット交感神経節細胞をモデルシナプスとして、平成29年度には、①構築されたコリン作動性シナプスの機能化と機能化されたシナプスの時空間的活性化と不活性化について28年度に継続して、また、29年度末までに、②細胞接着分子群によるシナプス構造の維持と強化、③シナプス構築因子蛋白群によるプレシナプス構築と維持のメカニズム、④シナプス構築蛋白群によるACh受容体クラスター化について、鍵蛋白の遺伝子導入による機能亢進や阻害を起こし、シナプス伝達効率変化を電気生理学的手法で解析するとともに、鍵蛋白を可視化してその動態とシナプス形態変化を、異色蛍光の軸索での分布密度や移動速度とシナプス小胞膜への局在化、シナプスでの局在発現と複合体形成、ACh受容体クラスター化、Musk複合体形成を指標として解析して、発育途上/成熟シナプスのコリン作動性シナプス構築・維持・強化・機能化を担う各種蛋白群の働きを理解し、シナプス活動に依存してダイナミックに変化するシナプス可塑性を担う蛋白分子の動態を明らかにすることを目標に挙げた本研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
平成28年11月に開催された北米神経科学学会の宿泊ホテルの支払をクレジットカードで行ったので、カード明細を受領してから学内決済に入ったため、決済時の3月には残金が不足していたことが分かり、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額318,400円は、平成28年度の北米神経科学学会への参加費・宿泊費・渡航費に使用する。
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Research Products
(10 results)