2013 Fiscal Year Annual Research Report
マングローブ林の保全と再生に必要な遺伝的多様性の解析:主要構成種5群の解析
Project/Area Number |
25290080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
梶田 忠 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80301117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 浩司 東京大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60647478)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱帯林 / 植物分類学 / 植物生態学 / 生物多様性 / 国際研究者交流(メキシコ・マレーシア) / 国際情報交換(ブラジル・シンガポール) |
Research Abstract |
インド洋-西太平洋地域と大西洋-東太平洋地域のマングローブ主要構成種について、統一的な手法で遺伝的多様性を評価し、遺伝的多様性の現状を正確に把握・評価すると共に、今後の保全・再生計画に向けた新たな学問的コンセンサス形成を目指している。研究期間内に、研究対象とする主要5群のマングローブ植物について、交付申請書に示した研究進行計画表に従って研究を実施している。 平成25年度には、対象とする5群全てについて、一部の例外を除いて、葉緑体DNAと核のSSRの両者を用いた研究が極めて順調に進行した。特に、Rhizophora mucronataの研究では際だった進展が見られ、マレー半島周辺では海流が遺伝構造の形成に大きく影響していることを明らかにし、論文発表した。また、同種の分布域全体についても、データ解析がほぼ終了し、論文発表できる準備が整いつつある。また、Xylocarpus, Sonneratiaでも、次年度から予定していたSSRを用いた実験を前倒しして、実施することができた。また、Bruguiera属については、分布域全体における葉緑体DNAと核SSRの実験・解析がほぼ修了し、論文を作成中であることに加え、絶滅危惧種のBruguiera hainesiiを加えた系統解析を実施した。 以上の実験に加え、太平洋地域から追加サンプルを得るため、ポンペイ(ミクロネシア)で現地調査を実施した。また、今後、大西洋-太平洋地域のマングローブの研究者と連携して研究を進めるために、メキシコ自治大学のNunez Farfan博士、及び、ブラジルUNICAMPのGustavo Mori氏と共同研究を開始した。メキシコでは現地調査を行って、Acrostichumのサンプルを入手し、葉緑体DNAを用いた解析を行った。また、Rhizohporaの研究では研究協力者であるWee Kim Shan博士が、Xylocarpusの研究では、JSPS外国人招へい研究者であるNazre Salehが大きく貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に示した研究進行計画表では、H25年度の目標として、Rhizophora(cpDNA, SSR実験・解析)、Bruguiera(cpDNA, SSR実験・解析)、Sonneratia(SSR実験・解析)、Xylocarpus(cpDNA実験・解析)、Acrostichum(SSR開発・出版、cpDNA実験解析)を挙げていた。しかし、研究は当初の計画以上に順調に進展し、Rhizophora(論文1本を出版、広域解析用SSR実験ほぼ終了)、Bruguiera(cpDNA・SSR実験終了、追加テーマの系統解析実験進行中)、Sonneratia(SSR実験に加え、cpDNA実験もほぼ終了)、Xylocarpus(cpDNA実験ほぼ終了。SSRマーカー開発論文出版。SSR実験順調に進行中)という、2本の論文発表と、次年度計画を前倒しにした実験を行うことができた。また、マングローブ植物の遺伝構造との比較のために、マングローブ植物と同様に海流を用いて種子散布を行うグンバイヒルガオについても、核マーカーを用いた遺伝構造の解析について論文発表することができた。 これら、当初計画以上の研究の進展が見られた理由は、(1)研究協力者のAlison Kim Shan Wee博士や大学院生等の共同研究者の貢献が大きかったことと、(2)JSPS外国人招へい研究者で千葉大学に滞在しXylocarpusの研究にあたったNazre Saleh博士の貢献が大きかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進においても、H25年度と同様に、当初計画を超えるぐらいの順調な進展を目指したい。特にH26年度は、主要5群の全てについて、論文作成・出版が目標にあがっている。これらを達成するために、十分な知識と能力を持ったポスドクを雇用し、データ解析と論文作成にあたらせたいと考えている。ポスドク候補者として、H25年にシンガポール国立大で学位を取得・卒業した、Alison Kim Shan Wee博士を予定している。また、大西洋-東太平洋地域のマングローブの研究を進めるために、研究協力者として、大学院生のJose Gutierrez氏を雇用することを検討している。 さらに、大西洋-東太平洋地域との研究連携をさらに強固にするために、メキシコ及びブラジルの研究者との共同研究を継続して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シンガポール国立大の共同研究者であるAlison Kim Shan Wee氏を、当初はH25年9月からポスドクとして雇用しようと計画していた。しかし、Wee氏の学位取得がH25年12月になったこと等の事情で、9月からは雇用できなかった。そこで、H26年2月に2週間日本に招聘して共同研究を実施し、また、3月半ばからは謝金にて雇用して、研究協力者として研究に従事させた。そのため、当初、ポスドク経費として予定していた経費の一部を、次年度使用分とすることになった。 次年度使用額とした829,736円は、全て、H26年4月からの、Alison Kim Shan Wee博士のポスドクとしての雇用にあてる。千葉大学の特任研究員としてH26年4月1日から8月31日までの5ヶ月間、月額270,967円で雇用するため、1,354,835円(内、20.42%は所得税として源泉徴収される)を人件費として要する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Oceanic currents, not land masses, maintain the genetic structure of the mangrove Rhizophora mucronata Lam. (Rhizophoraceae) in Southeast Asia2014
Author(s)
Alison K. S. Wee, Koji Takayama, Takeshi Asakawa, Bijoy Thompson, Onrizal, Sarawood Sungkaew, Nguyen Xuan Tung, M. Nazre,Khin Khin Soe, Hugh T. W. Tan, Yasuyuki Watano, Shigeyuki Baba, Tadashi Kajita and Edward L. Webb
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Journal Title
Journal of Biogeography
Volume: 41
Pages: 954-964
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of 11 polymorphic microsatellite markers for Xylocarpus granatum (Meliaceae) using next-generation sequencing technology2013
Author(s)
Tomizawa, Y., Y. Shinmura, A.K.S. Wee, K. Takayama, T. Asakawa, O.B. Yllano, S.G. Salmo III, E.R. Ardli, N.X. Tung, N.B. Malekal, Onrizal, S.H. Meenakshisundaram, S. Sungkaew, M.N. Saleh, B. Adjie, K.K. Soe, E. Oguri, N. Murakami, Y. Watano, S. Baba, E.L. Webb, T. Kajita
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Journal Title
Conservation Genetics Resources
Volume: 5
Pages: 1159-1162
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Phylogeographyof a widespread mangrove species: Xylocarpus granatumJ.König2014
Author(s)
Saleh, N., Y. Tomizawa, K. Takayama, Y. Shinmura, A.K.S. Wee, T. Asakawa, O.B. Yllano, S.G. Salmo III, E.R. Ardli, N.X.Tung, N.B. Malekal, Onrizal, S.H. Meenakshisundaram, S. Sungkaew, B. Adjie, K.K. Soe, Y. Watano, S. Baba, E.L. Webb, T. Kajita
Organizer
日本植物分類学会第13回大会
Place of Presentation
熊本大学
Year and Date
20140323-20140323
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[Presentation] マングローブ植物の全球的遺伝的多様性解明に向けた国際研究ネットワークの構築2013
Author(s)
梶田 忠, 高山 浩司, Alison, Kim Shan Wee, 小野 潤哉, 富澤 祐紀, 新村 芳美, Nazre Saleh, Edward Webb, Leyman, 朝川 毅守, 綿野 泰行, 馬場 繁幸
Organizer
日本植物学会第77回大会
Place of Presentation
北海道大学
Year and Date
20130913-20130913
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