2014 Fiscal Year Annual Research Report
tRNA擬態タンパク質・翻訳Gタンパク質複合体によるリボソーム機能拡張機構の解明
Project/Area Number |
25291020
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 耕一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (10262073)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | リボソーム / 翻訳制御 / 遺伝暗号 / 直行性 / タンパク質合成 / tRNA擬態タンパク質 / 翻訳終結 / mRNA品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、リボソーム機能部位との相互作用機構について詳細な解析を行った。真核生物のtRNA擬態タンパク質であるペプチド鎖解離因子eRF1のL123残基(出芽酵母での残基番号)は、これまでに明らかにしたeRF1、およびその古細菌オーソログaRF1に配列が保存され、変則的な終止コドン暗号認識を行う繊毛虫類eRF1の終止コドン特異性との相関性が高い。この残基は立体構造上、我々のグループが予測した終止コドン塩基に対する直接結合部位と近接するものの、いずれのeRF1単体/複合体構造においてもドメイン外に突出して配向する性質を示していた。一方、これまでに明らかにしたeRF1/eRF3(古細菌aRF1/eEF1A)とリボソームのドッキングモデルの観察から、このL123残基はeRF1と終止コドン塩基との複合体形成インターフェースではなく、tRNAのコドンとmRNA上のアンチコドンとの正しい対合状態を感知するリボソーム機能残基との相互作用に関わることが示唆された。このL123残基機能性を詳細に解明するため、出芽酵母eRF1とヒト由来eRF1の相当部位との双方に対し網羅的アミノ酸置換体を作成し、酵母内での機能解析を行った。その結果、このL123残基について、(1)側鎖の物理化学的・立体化学的特性とコドン認識能の間には密接な関連性が存在すること、(2)L123残基変異体の示すコドン認識機能は、これまでに分離された塩基認識部位のコドン認識変異体とは異なり、eRF3との適切な相互作用を前提として機能すること、が明らかになった。このことは、eRF1とeRF3との結合インターフェースにおける適切な相互作用が、最終的にeRF1のコドン認識部位の機能を介して、tRNA同様にリボソームの機能部位に感知され、その結果リボソームの大小サブユニットのアロステリック構造変換を引き起こすことで、正しい終止コドン認識が行われるという全く新規なモデルの提案につながった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の成果に基づき、リボソームとtRNA擬態分子複合体とのドッキングモデルの構築を行い、前年度までに構築した変異体タンパク質の網羅的機能解析を実施完了した。これらの解析により、昨年度成果の延長にあらたな機能モデルの提案が可能となり、論文公表を行うことができた。他のtRNA擬態分子eRF1/eRF3機能部位変異体も、順調に構築が進み所機能解析系にて解析を行う予定である。また、昨年度までに構築したあらたな遺伝学解析系の構築による機能変異体の分離も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度よりtRNA擬態性タンパク質のタンパク質合成系のおける直交性解明のために、翻訳終結ならびにmRNA品質管理機構などそれぞれの過程特異的に関わる関連因子の機能解析も同時に進めている。今後tRNA分子擬態タンパク質のあらたな普遍的メカニズムが明らかになることが期待される。
|
Causes of Carryover |
予定していた変異体の解析のうち、期待以上の研究成果が見込まれる変異体の解析と論文公表を優先したため、当座予定した高額試薬代金の消耗が少なく差額が生じることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験期間全体の計画を遂行するため、次年度の物品費として使用する。
|