2013 Fiscal Year Annual Research Report
シダ植物の無配生殖(無性生殖)を引き起こす遺伝領域の特定
Project/Area Number |
25291089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村上 哲明 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60192770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿野 泰行 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70192820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子 / ゲノム / 植物 / 進化 / シダ |
Research Abstract |
申請者らのこれまでの研究によって、シダ植物の無配生殖種は近縁な有性生殖種と容易に交雑すること、ならびに生じた雑種個体では高頻度で減数した子孫が生じ、無配生殖と有性生殖型の分離も起こることが明らかになっていた。そこで本研究では、近縁な2倍体有性生殖種の遺伝マーカーの連鎖地図を基礎とし、無配生殖種ならびに雑種個体における遺伝的分離をゲノムワイドに解析することによって、無配生殖を引き起こすゲノム領域、および無配生殖種における有害遺伝子の含まれる領域が連鎖地図上のどこに存在するかを特定することを目的とする。 平成25年度には、実際にヤブソテツ類、ベニシダ類、イタチシダ類に共通して利用可能な核DNAのマーカーを設計することできた。さらに、それと平行して、オニヤブソテツ(3倍体無配生殖型)とヒメオニヤブソテツ(オニヤブソテツの2倍体有性生殖型)の4倍体雑種、ならびにベニシダ(3倍体無配生殖種)とハチジョウベニシダ(2倍体有性生殖種)の間の4倍体雑種について、それぞれの子孫における生殖様式の分離(無配生殖的に胞子体を形成する子孫群と形成しない子孫群)を調べた。オニヤブソテツ類の雑種については、その子孫で無配生殖型と有性生殖型の分離が見られたが、ベニシダ類については、今年度に調べた雑種個体については、無配生殖型の子孫しか検出できなかった。 一方、今年度には、イタチシダ類についても新たな2倍体有性生殖種(モトイタチシダ)を屋久島で発見、採集することができた。そこで、イタチシダ類についてもオニヤブソテツ類、ベニシダ類と同様の解析を進めていける。したがって、新たな2倍体有性生殖種の発見は、本研究の今後の発展に繋がるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に最も重要な核DNAマーカーの開発は順調に進んだ。一方、ベニシダ類では3倍体無配生殖種のベニシダと2倍体有性生殖種のハチジョウベニシダの間に生じた4倍体雑種の子孫が期待したように無配生殖型と有性生殖型に分離してくれず、無配生殖型ばかりだったのは残念であった。しかし、ベニシダに比較的近縁で多くの無配生殖種が報告されていた(2倍体有性生殖種は、イワイタチシダしか報告されていなかった)イタチシダ類においても、屋久島でのベニシダ類の材料採集の際に新しい2倍体有性生殖種のモトイタチシダを発見することができた。ベニシダ類の雑種の別個体で分離を検討すると同時に、イタチシダ類についても有性生殖種と無配生殖種の雑種を調べていけることになったので、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初に予定したヤブソテツ類(オニヤブソテツ類)、ベニシダ類に加えて、イタチシダ類も無配生殖種と有性生殖種の雑種、さらにはそれの遺伝的分離を調べる材料として使えることが平成25年度の研究で明らかになったので、イタチシダ類についても本格的に解析を進めていく。このことによって、無配生殖を引き起こす遺伝領域をより詳しく特定できる可能性が高まると考えられる。
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Research Products
(2 results)