2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292078
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
斎藤 芳郎 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (70357060)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | セレン / セレノプロテインP / 受容体 / セレン運搬作用 / クロスリンカー |
Research Abstract |
平成25年度において本研究では、SePのセレン運搬作用に必須のプロセスと考えられる細胞表面への結合およびSeP受容体の同定を目指して検討を行った。ヒトTリンパ球腫Jurkat細胞やヒト神経芽腫SH-SY5Y細胞、ヒト横紋筋由来RD細胞についてSePのセレン運搬作用を、GPx1やSePに対する抗体を用いたWestern blot法で解析した。その結果、SePのセレン運搬作用が細胞毎に大きく異なり、Jurkat細胞やSH-SY5Y細胞では低濃度で運搬するのに対し、RD細胞では高濃度のSePが必要であることが分かった。骨格筋由来C2C12細胞でも、SePによるセレン運搬作用は、高濃度の条件でしか認められなかった。これより、Jurkat細胞やSH-SY5Y細胞では、高親和性の受容体が発現し、RD細胞やC2C12細胞では、高親和性の受容体が発現していない可能性が考えられた。そこで、受容体の同定には、増殖能力が高いJurkat細胞を用いることとした。次に、細胞膜への特異的な結合や親和性を明らかにするために、75Se標識SePを作成した。SePを分泌するHepG2細胞を、75Se存在下で72時間培養し、培養上清を回収した。回収した上清から、Ni-NTAカラムにより75Se標識SePを調製した。SeP濃度は、ELISA法にて測定した。今後、クロスリンク実験を進め、複合体を免疫沈降できる抗体を選別する予定である。75Seを用いた実験と同時進行で、抗体を用いた実験系の確立を行った。SeP-受容体複合体をクロスリンクし、抗SeP抗体でWestern blot解析した結果、75Se標識SePを用いた場合と類似の複合体形成が観察された。また、フローサイトメーターを用いたSeP結合アッセイ系の構築もできた。次年度、複合体を免疫沈降できる抗体を選別し、質量分析法によるSeP受容体同定を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成25年度において、SePによるセレン運搬の第一ステップとなる細胞膜表面のSeP受容体の同定を目的として検討を行った。その第一段階として、各種培養細胞におけるSePの取り込みやセレン運搬作用を比較検討した結果、筋肉系細胞では、SePの取り込み能が低く、セレンを運搬するためには高濃度のSePが必要であることが明らかとなった。本結果は、糖尿病態におけるSePの増加と筋肉細胞におけるインスリン抵抗性を考える上で、重要な知見であると考えられる。また、SeP受容体を探索する上で、低濃度でセレンを運搬することができる培養細胞を同定することが出来、受容体同定を行う研究基盤を構築出来たと考える。これらの検討課題については、当初の計画よりも進展が見られたと考えている。一方で、抗体のスクリーニングに必要と考えている75Seの入手に時間を要し(海外からの輸入の為、学内および学外の事務手続きおよび海外担当部署とのやりとりに時間を要した)、多少研究計画の進行に遅延が見られた。受容体の同定は、本研究の最重要課題であり、また最も困難が予想される研究課題である。今年度の検討により、75Se標識SeP等の研究ツールがそろい、同定を検討する培養細胞を決定することが出来たので、平成26年度は受容体の同定に向けて、粘り強く検討を続けていきたいと考えている。以上の達成状況から、本年度はおおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、SeP受容体の同定に加え、SePに含まれるセレンがどのようにして細胞内のセレン含有蛋白質に取り込まれるか、またセレン運搬後のSePの構造変化を明らかにし、SePによるセレン運搬作用の全貌の解明を目的としている。本年度の検討により、上記課題を遂行する上で必要な研究ツールがすべてそろい、検討する培養細胞の性質も明らかとなった。今後、受容体の同定を進めながら、同時進行でセレン運搬メカニズムの研究についても遂行し、高親和性・低親和性の細胞を比較しながら、詳細な検討を進めていきたい。受容体の同定については困難が予想されるが、セレン運搬作用のメカニズム解析については、アウトラインが出来ており、大きな問題は無いと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、HPLCシステムの購入を予定していたが、機器の選定に時間を要したため、年度内の購入を見送った。 今年度で機器の選定は終了しているので、次年度早期に機器の購入を行う予定である。
|
-
-
[Journal Article] Metformin Suppresses Expression of the Selenoprotein P gene via an AMPK-FoxO3a Pathway in H4IIEC3 Hepatocytes.2013
Author(s)
Hiroaki Takayama, Hirofumi Misu, Hisakazu Iwama, Keita Chikamoto, Yoshiro Saito, Koji Murao, Atsushi Teraguchi, Fei Lan, Akihiro Kikuchi, Reina Saito, Natsumi Tajima, Takayoshi Shirasaki, Seiichi Matsugo, Ken-ichi Miyamoto, Shuichi Kaneko, and Toshinari Takamura
-
Journal Title
Journal of Biological Chemistry,
Volume: 289
Pages: 335-345
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-