2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
島田 卓哉 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (10353723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
佐藤 淳 福山大学, 生命工学部, 講師 (80399162)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 堅果 / 動物植物相互作用 / アカネズミ / 食性 / タンニン |
Research Abstract |
堅果(コナラ属樹木の種子、ドングリ)は森林に生息する動物にとって貴重な餌資源であるが、秋から冬に限定される食物であると考えられてきた。本研究では、冬越し堅果(秋に落果後、翌春まで生き残った堅果、もしくはそこから生じた実生の地下子葉部分)が翌年の春から夏にかけても野ネズミの主要な食物であることを検証することを目的としている。 野ネズミによる冬越し堅果の利用実態を解明し、堅果の栄養価の推移との関連を明らかにするために、2地点(岩手大学滝沢演習林-コナラ林、北海道大学雨龍研究林-ミズナラ林)において、野ネズミの捕獲調査及び堅果の栄養価の経時的変化の追跡を実施した。 2013年は岩手調査地においてはコナラが豊作であった。この森林においては、アカネズミによるコナラ堅果もしくは冬越し堅果の捕食率は、越冬直後(4月上旬:39.3%、下旬:19.0%)と越冬前(30.5%)とは同程度に高く、春においても堅果がアカネズミの重要な資源であることが明らかになった。しかし、実生展葉後(5月以降)には捕食率は著しく低下することが判明した(5~9%)。一方、コナラ堅果は発育に伴って徐々にタンニンが増加し非構造性炭水化物が減少するため、餌資源としての価値が低下することが確認された。この傾向は、実生展葉後(概ね5月中旬以降)に顕著になり、平均タンニン含有率が約30%(タンニン酸当量)にまで上昇した。アカネズミによる冬越し堅果の捕食はこの栄養価の低下とよく対応していることから、冬越し堅果は実生展葉前までは利用可能な資源であるが、展葉後は資源としての価値を失うものと考えられた。また,ミズナラ林においても同様の結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は課題開始初年度にあたり,共同研究者と共に2箇所の調査地の設定を行い,当初予定通りの調査を行った.現時点では解析途中のデータが多いが,アカネズミによる堅果の利用が春にも高頻度であることなどの新奇な知見が得られており,化学分析も順調に遂行されていることから,このような評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2箇所の調査地において,野ネズミの捕獲調査を継続し,以下の分析及び解析を行う. 1)昨年度サンプルした糞に含まれるプロリン定量を今年度早期に終了させ,野ネズミのタンニン摂取量の推定を行う. 2)野ネズミの食性の解明を目的としたDNAバーコーディング手法を野外のサンプルに適用し,解析を開始する. 3)岩手調査地において,捕獲データに基づいてアカネズミの野外での成長曲線の推定を行い,堅果の豊凶と冬越し堅果の利用がアカネズミの初期成長に与える影響を解析する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品価格が想定していたよりも安価であったため差額が生じたが,差額は各機関で1万円以下と少額であるため,次年度に繰り越した. 物品費に組み入れて使用する予定である.
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