2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Meguro Parasitological Museum |
Principal Investigator |
小川 和夫 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 館長 (20092174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70261956)
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 住血吸虫 / 粘液胞子虫 / クロマグロ / 種苗生産 |
Research Abstract |
陸上施設のクドア防除法を確立するため、Kudoa yasunagaiとヒラマサをモデルとし、飼育水のUV処理による寄生抑制効果を調べた。K. yasunagaiの寄生が例年見られる種苗生産施設で高速繊維濾過処理した海水とUV殺菌(68mJ/cm2)濾過海水でヒラマサ稚魚を約2ヶ月間飼育し、寄生状況の経時変化を調べた。その結果、無処理濾過海水では飼育4週目から寄生が見られ、8週目には最高寄生率90%に達した。それに対してUV処理区では寄生がmまったくみられなかった。本試験の結果、クドアの感染体は物理濾過のみでは除外することは難しいが、UV照射により不活化できることが明らかとなった。 クロマグロ稚魚が住血吸虫に対する特異抗体を産生するのか調べた。和歌山県で飼育されていた人工クロマグロ種苗を随時サンプリングし、血清中のCardicola opisthorchisに対する抗体価を、今回新たに確立したELISA法を用いて測定した。抗体価は住血吸虫の寄生が見られ始めた当初には低い値であったが、その約1ヶ月後に増加した。被寄生個体の抗体価は非寄生個体より有意に高く、クロマグロ0歳魚はC. opisthorchisに対して特異的な免疫応答をすることを確認した。また、プラジクアンテル投薬前後で抗体価を比べたが、寄生数と抗体価の間に明白な関係はみられなかった。 住血吸虫C. opisthorchisの中間宿主はフサゴカイ類のTerebella sp.であることが特定されている。長崎県対馬においては,Terebella sp.が生け簀網のフロートやロープの上に着生していることを確認した。しかし,和歌山県串本においては,中間宿主は見つからなかった。対馬の養殖場が開放的環境にあるのに対し,串本では閉鎖的環境で養殖されており,その環境の違いが中間宿主の分布に反映されていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クドア感染に関しては,飼育水のUV殺菌の有効性が証明された。この成果を発展させて,実用的なUV照射法の確立やクロマグロの他種のクドアへの検証も可能になった。 Cardicola opisthorchisによる住血吸虫症に関しては,抗体測定が可能になった。中間宿主も対馬をフィールドにすることによって,生物学的,生態学的知見を集積する目途が立っている。ただ,もう1種の住血吸虫C. orientalisについては中間宿主を特定するという課題が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
陸上施設でのヒラマサ種苗生産過程で,Kudoa yasunagaiの感染防除に必要なUVの最低照射量を求め,クロマグロに寄生する他種のクドアでも同様の効果があるのかを検証する。 住血吸虫については中間宿主が発見された対馬の養殖場で定期調査を行い,養殖場内の分布,寄生の季節性,セルカリア放出の時期など,中間宿主の生物学的,生態学的知見を集積し,将来の対策への応用を図る。さらに,未発見の住血吸虫C. orientalisの中間宿主の発見も目指す。また,対馬とは環境の異なる和歌山県の養殖場での中間宿主の所在を明らかにする。プラジクアンテル投薬によって死んだ住血吸虫の虫体が宿主の免疫系に暴露されることから,昨年度に確立したELISA法を用いて,投薬後の抗原増加が抗体価に及ぼす影響についてさらに調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請時にはクロマグロ住血吸虫の生活環は不明であった。その後,フサゴカイの一種が中間宿主であることが判明したため,2年度以降,中間宿主が発見された長崎県対馬地方,未発見の和歌山県串本など諸地域のフィールド調査,並びにフサゴカイを用いた実験の実施が想定されるため,初年度予算を一部残すこととした。 主としてクロマグロ住血吸虫の中間宿主に関する研究のためのフィールド調査費,フサゴカイを用いたin vivo実験に使用予定である。
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Research Products
(3 results)