2015 Fiscal Year Annual Research Report
動物の新規遺伝子病の分子基盤解明、診断、予防および治療法の開発
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25292181
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大和 修 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (80261337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢吹 映 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (10315400)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動物遺伝子病 / 分子基盤 / 遺伝子型検査 / 分子疫学 / 疾患モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、各種動物遺伝子病について、機能的および位置的解析法を用いて原因変異を明らかにし、遺伝子型検査法や診断法を開発して、集団内の遺伝子頻度を調査することを目的として実施した。また、新規治療法開発のための研究計画にも着手した。 犬疾患では、トイプードルの家族性成犬発症型運動失調症については、発症犬30頭および非発症対照犬30頭を用いて、イルミナ社の全ゲノムスニップアレイによるゲノムワイド関連解析を実施した。その結果、第3染色体の部分に関連領域を見出し、その領域の数種の遺伝子を解析した。しかし、現時点までには、候補となる原因遺伝子および原因変異を確定できておらず、解析は継続中である。一方、チワワの神経セロイドリポフスチン症については、CLN7遺伝子のコード領域に2塩基欠失を同定した。この変異は、近年報告されたチャイニーズクレステッドドッグ孤初例の候補変異と同一であったため、本変異が同疾患の原因となることが示唆された。 猫疾患では、GM1ガングリオシドーシスの新規2変異(2塩基欠失および1塩基置換によるナンセンス変異)について、分子疫学調査を行ったが、両変異ともに頻度は0.1%以下であった。また、エーラスダンロス症候群においては、皮膚脆弱症に関連する遺伝子であるADAMTS2およびCOL5A1遺伝子について、それらのコード領域を調べた。しかし、候補変異は認められず、現在COL5A2遺伝子を解析している。 また、ガングリオシドーシスの免疫染色を用いた新規診断法を開発した。治療試験では、β-ウレイドプロピオナーゼ欠損症の猫2例に対して、アンモニア生成を軽減する処方食(ヒルズl/d)の効果を検討した。その結果、血中アンモニア濃度は低下傾向を示し、処方前の下痢および被毛粗剛の症状が改善した。したがって、本処方食は本疾患の補助療養として有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析したすべての遺伝子病の病原性変異同定には至っていないが、その内の2疾患3変異(犬1疾患、猫1疾患2変異)については新たに病原性変異を同定し(チワワの神経セロイドリポフスチン症)、新規遺伝子型検査法(同3変異ともTaqManプローブによるリアルタイムPCR法)を開発した。また、猫のGM1ガングリオシドーシスの2変異については疫学調査も実施し、純血種および雑種猫集団における変異アレル頻度も明らかにした。 現時点で原因変異が明らかになっていない疾患においても、一定の解析を進めることができ、多くの候補遺伝子を除外するに至っており、原因変異解明に近づいている。その中でもトイプードルの家族性成犬発症型運動失調症については、ゲノムワイド関連解析を実施することができたことは、この後の解析にとって非常に大幅な進展となった。また、その他の疾患(犬猫のカナバン病、猫のキサンチン尿症、猫の神経セロイドリポフスチン症)は、確認実験によってほぼ原因変異が同定できる段階であり、来年度には報告可能となる。 さらに、治療試験については、猫のβ-ウレイドプロピオナーゼ欠損症について処方食を用いた研究を実施することができ、その有効性を証明できた。本症の発症例は、純血種猫および雑種猫の両集団においても非常に多いことがわかっているため、既存の処方食が治療に有効性を示すことが判明したことは今後の治療戦略に大きく貢献するものと考えられる。 上記のような成果に基づいて判断すると、本年度も概ね順調に計画を実行して、着実な成果を上げることができていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在調査を継続している疾患(カナバン病、チロシン尿症、キサンチン尿症、神経セロイド・リポフスチン症、メトヘモグロビン血症、メチルマロン酸尿症、骨形成不全症、など)については、病原性変異を同定するために予定どおり研究を推進していく。 また、今後の治療研究に応用していく予定の猫のサンドホフ病および犬の捕捉好中球症候群については、抗炎症・免疫抑制療法を実施予定である。 さらに、今年度に新たに研究対象として加わった疾患(オロット酸尿症、クラッベ病、など)についても本研究課題の一部として新たに取り込んで、これらの分子基盤の解明を推進していく。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Real-time PCR genotyping assay for canine progressive rod-cone degeneration and mutant allele frequency in Toy Poodles, Chihuahuas and Miniature Dachshunds in Japan.2016
Author(s)
Kohyama M, Tada N, Mitsui H, Tomioka H, Tsutsui T, Yabuki A, Rahman MM, Kushida K, Mizukami K, Yamato O.
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Journal Title
J Vet Med Sci
Volume: 78
Pages: 481-484
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Real-time PCR genotyping assay for feline erythrocyte pyruvate kinase deficiency and mutant allele frequency in purebred cats in Japan.2015
Author(s)
Kushida K, Giger U, Tsutsui T, Inaba M, Konno Y, Hayashi K, Noguchi K, Yabuki A, Mizukami K, Kohyama M, Endo Y, Yamato O.
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Journal Title
J Vet Med Sci
Volume: 77
Pages: 743-746
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] サンドホフ病の猫2症例.2016
Author(s)
坂大智洋, 國香正寿, 神山萌子, 大和修, 二瓶和美, 内田和幸.
Organizer
日本獣医内科学アカデミー
Place of Presentation
パシフィコ横浜, 神奈川県横浜市
Year and Date
2016-02-19 – 2016-02-22
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[Presentation] ホスホフルクトキナーゼ欠損症に類似した溶血性貧血を呈した日本スピッツの1例.2015
Author(s)
疋田哲也, 田中彰人, 西峯健介, 下茂悠作, 齊藤遥, 髙智正輝, 佐藤 遼, 萩清美, 中川正徳, 小山田和央, 井上理人, 大和修.
Organizer
動物臨床医学会
Place of Presentation
大阪国際会議場, 大阪府大阪市
Year and Date
2015-11-20 – 2015-11-22
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[Presentation] 雑種猫の同腹2例に認められた神経セロイド・リポフスチン症.2015
Author(s)
田中啓之, 矢中雄一郎, 杉浦雄一, 中村孝行, 牛草貴博, 鳩谷晋吾, 内田和幸, 神山萌子, 矢吹映, 大和修.
Organizer
日本獣医学会
Place of Presentation
北里大学, 青森県十和田市
Year and Date
2015-09-07 – 2015-09-09
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[Presentation] Mutant allele frequency of erythrocyte pyruvate kinase deficiency in the mixed-breed cat population in Asian and North African countries.2015
Author(s)
Kazuya Kushida, Urs Giger, Mohammad Alamgir Hossain, Mohammad Mahbubur Rahman, Mohammad Mejbar Uddin, Abdurraouf Gaja, Keun-Woo Lee, Akira Yabuki, Moeko Kohyama, Hye-Sook Chang, Keijiro Mizukami, Osamu Yamato.
Organizer
World Small Animal Veterinary Association (WSAVA) World Congress 2015
Place of Presentation
Centara Grand Hotel & Convention Center, Bangkok, Thailand
Year and Date
2015-05-15 – 2015-05-18
Int'l Joint Research
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[Book] 日本臨床検査同学院 遺伝子分析科学認定士制度委員会編. 遺伝子検査技術 遺伝子分析科学認定士(初級)テキスト 改訂2版2016
Author(s)
三村邦裕, 松村聡, 井上聡子, 古川泰司, 片岡佳子, 水口國雄, 堀井隆, 松野一彦, 大島利夫, 渡邊真理子, 舩渡忠男, 長田誠, 糸賀栄, 佐藤謙一, 羽田明, 重松美加, 真里谷靖, 行正信康, 大和修, 他.
Total Pages
3(217-219)
Publisher
克誠堂出版