2013 Fiscal Year Annual Research Report
高次宿主制御を司るバキュロウイルス組織トロピズムの分子解剖
Project/Area Number |
25292196
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝間 進 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20378863)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | バキュロウイルス / 組織トロピズム / トランスクリプトーム / チョウ目昆虫 / カイコ / 変異ウイルス / 次世代シークエンサー / BmNPV |
Research Abstract |
昆虫ウイルスの多くは経口感染により伝播し、最初に侵入する組織である「中腸でのみ」複製・増殖を行う。一方、昆虫ウイルスの一種であるバキュロウイルスの多くは、例外的に中腸にとどまらず、気管や血液を介して中枢系を含めた全身に移行し、「全身感染」を確立することが知られている。申請者は、このバキュロウイルスの「全身感染」において、組織トロピズムが存在し、絹糸腺やマルピーギ管、中腸ではウイルスの増殖が抑制されていることを定量的に証明した。しかしながら、この組織トロピズムを実現しているウイルス遺伝子、およびその分子機構はそのほとんどが未解明である。本研究では、ウイルス・宿主の両面からこの現象の分子解剖を行い、責任遺伝子を網羅的に同定するとともに、高次宿主制御における役割を解明することを目的とする。 今年度は、変異ウイルスライブラリーを用いて、組織トロピズムに異常があるウイルスのスクリーニングを行った。一方、ウイルス感染組織における遺伝子発現の差を調査するために、カイコ5齢幼虫を用いてBmNPVの経口感染時におけるトランスクリプトーム解析を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ウイルス遺伝子の発現量を指標として、変異ウイルスライブラリーを用いた組織トロピズム異常変異体のスクリーニング系を確立することができた。現在のところ、まだ顕著な表現型を示す変異体は同定できていないが、来年度もこの系を利用してスクリーニングを継続する予定である。一方、ウイルス感染組織間における比較トランスクリプトーム解析においては、計画通り経口感染時のウイルス感染組織を継時的にサンプリングし、RNA-seqを実施することができた。今後、このデータを解析することで、感染組織間で発現パタンが異なるウイルス遺伝子を同定することができると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度確立したスクリーニング系を用いて、組織トロピズム異常変異体のスクリーニングを継続する。また、ウイルス感染時の脂肪体、中腸、血球のRNA-seqデータを解析し、感染組織間で発現パタンが異なるウイルス遺伝子を同定するとともに、宿主遺伝子の発現変動についても検討する。一方、私たちはマーカー挿入型変異体を用いたスクリーニングから、絹糸腺でのウイルス増殖抑制に関わるウイルス遺伝子bv/odv-e26の同定に成功しているが、そのメカニズムについては不明である。今年度は、bv/odv-e26の絹糸腺における役割を調査することで、バキュロウイルスの組織トロピズム実現原理の一端を解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の計画として、スクリーニングにより組織トロピズム変異体を同定し、そのウイルスの詳細な解析を行うことを予定していた。しかしながら、現時点では、有望な変異体がとれていないため、その遺伝子に関する詳細な解析に移行できておらず、次年度使用額が生じた。 次年度は、スクリーニングを継続し、組織トロピズム変異体の単離を目指す。単離できた際はその詳細は表現型解析を行う。
|