2013 Fiscal Year Annual Research Report
多機能分子の細胞内活性の統合と制御ーPI3Kの光操作を用いた研究
Project/Area Number |
25293042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中田 隆夫 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50218004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 明宏 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80322080)
石井 智浩 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60549947)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光スイッチ / 解剖学 / 細胞組織 / シグナル伝達 / 神経科学 |
Research Abstract |
細胞内で多機能をもつPI3K (Phosphatidylinositol 3-kinase)のようなシグナル分子は、その活性化だけでなく、その抑制の機構も重要である。その生成物であるPIP3 (phosphatidylinositol 3,4,5-triphosphate)は、PTENによって逆反応が起こり、化学的に抑制されることが知られている。しかし、化学的抑制のみでは拡散という限界があり、細胞内の各部分で部位特異的にキレのある制御はできない。我々は、PI3Kの光スイッチを作製し、培養海馬神経細胞の成長円錐でPI3Kを活性化すると、その成長円錐は増大した。しかし、成長円錐の細胞膜上のPIP3濃度はあまり上昇せず、PIP3はエンドゾームによって軸索内を細胞体側に運ばれた。この現象をもとに、我々はPIP3が局所で一定以上上昇しないという仮説をたて、そのメカニズムについて検討する。これらの結果から、PIP3と神経細胞の極性形成について検討する。 海馬の神経細胞に、我々の開発したPI3Kの光スイッチ(Kakumoto, Nakata 2013)を発現させ成長円錐のひとつに青色光をあてると、ラメリポディアやフィロポディアが出来て活発に動き、成長円錐の面積が増大し、細胞内の一番の成長円錐にすることができる(Kakumoto, Nakata 2013)。光依存的にその成長円錐にPIP3の全体量が増加する。成長円錐はフィロポディアやラメリポディアなどアクチン細胞骨格が主な末梢のP-zoneと膜小器官がある中心部のC-zoneに分けられる。この時、実に不思議なことに、PIP3のP-zoneの濃度はほとんど上昇することなく一定の値以下とわかった。成長円錐でのAkt-PHの輝度の高い部分は、C-zoneであり、エンドサイトーシスされたPIP3であった。これらは細胞膜上にはなく、機能しないと考えられた。まとめると、成長円錐でPIP3を人工的に産生しても有効なPIP3の量は少なく保たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.PI3K光スイッチとPIP3のセンサーを培養神経細胞に遺伝子導入し、光スイッチによる光刺激を行った。 2.PI3K光スイッチの神経細胞でのキャラクタリゼーションを行った。光スイッチの膜への移行、Akt-PHの移行のタイムコース、刺激のための光量と細胞ダメージなどを得た。 3.PIP3の神経細胞運動における機能をPI3K光スイッチを用いて明らかにする。 4.フィロポディア、ラメリポディアの増加がおこり、それらの運動の活性化を示すことが分かった。 5.PIP3のマーカーであるAkt-PHとフィロポディアの重要な成分であるactin-GFPが、成長円錐内で同じ局在を示すことが分かった。 申請時の以上の項目を明らかにし、論文にすることができた(Kakumoto, Nakata 2013)ので、予想以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.現象の確立 細胞膜のPIP3を上げていくとどうなるか?急に下げるとどうなるか?についての知見をより詳しく調べる。 2.メカニズム エンドサイトーシス、突起の伸長、の2点はさらに詳しく研究する。 3.また研究の過程で、低分子量G蛋白のRac1やCDC42がこのメカニズムに関わっている知見を得た。この点は細胞運動のシグナル伝達を調べる上で重要であるので推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養細胞を使用する実験を優先したため、マウスを用いる実験の費用は翌年度に繰り越すこととなった。 培養細胞を用いた実験をもとに、マウスを用いる実験を行う。
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