2013 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌による宿主行動変化の全容とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
25293054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
須藤 信行 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60304812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 泰裕 東海大学, 医学部, 教授 (60170221)
古川 智一 九州大学, 大学病院, 助教 (70617365)
吉原 一文 九州大学, 大学病院, 助教 (20444854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境生理学 / 腸内細菌 / 行動 / 不安 |
Research Abstract |
本年度は、腸内細菌が宿主の行動特性に与える影響について無菌マウス(GF), SPFマウスの糞便を移入した無菌マウス(EX-GF), Bifidobacterium infantis, Blautia coccoides単一細菌マウスにおける運動能、不安関連行動を比較、検討した。 マウスの自発運動能評価の指標としてオープンフィールド法による総移動距離(DT30)を用いた。その結果、GF群はEX-GF群と比較し、いずれの週齢においても有意に長い距離を移動していた。Bifidobacterium infantis (Bi)群では、EX-GF群と同程度にDT30が減弱していたが、Blautia coccoides (Bc)群では減弱効果は認めず、GF群と同程度に多動であった。次に不安関連行動をOFTとガラス玉埋没行動(marble burying behavior: MBB)を用いて評価した。OFTにおける不安関連行動の指標として辺縁部滞在時間(TS30)を用いた。GF群はEX-GF群と比較し、いずれの週齢においても有意に辺縁部滞在時間が長かった。Bc群は、GF群と比較し、7,10週齢において有意にTS30が短縮していた。一方、Bi群は、GF群と同程度の不安レベルであった。次にMBBを用いた不安関連行動を検討したところ、7週齢ではGF, EX-GF群の間に埋められたビー玉数に差はなかったが、週齢を重ねるにつれてEX-GFのガラス玉覆い隠し行動は減弱した。一方、Bc群は、GF群と比較し、全週齢にわたってNBMは低かった。一方、Bi群は、GF群と比較し、7週齢では低下していたが、10,16週齢時点では差はなく、時間経過を考慮したANOVAでは群間差を認めなかった。 以上の結果は、GFマウスは、EX-GFマウスと比較し、多動で不安レベルが高いこと示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、無菌マウス、人工菌叢マウスの運動能、不安関連行動を明らかにし、その結果をNeurogastroenterology & Motility誌上に発表した。本研究はコンタミネーションの可能性を排除した厳密な環境下における行動特性を評価したものであり、これまでの研究手法の問題点を解決するとともに、本研究領域の基盤データとして価値あるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づき、以下の実験を進めていく。 実験1.腸内フローラ定着による脳内遺伝子発現の経時的変化 各マウス間で認められる行動特性が如何なる脳内基盤に基づいて生じているかを明らかにするために、GF, EX-GF, Bifidobacterium infantis, Blautia coccoidesマウスにおける皮質、海馬での遺伝子発現の変化を7週齢、16週齢で比較、検討する。有意な変動が認められた遺伝子に関しては、Real-time PCRで確認する。 実験2.メタボローム解析 人工菌叢マウスの血漿、脳(皮質、海馬)を用いてメタボローム解析を行う。本法を用いることにより人工菌叢マウスの体内で進行している代謝状況を詳細に把握することができる。血漿を対象としたメタボローム解析はまず、全てのサンプルをガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)にて水溶性低分子代謝物と脂肪酸について解析する。また、GC-MS に加え、液体クロマトグラフィー-質量分析計(LC-MS)による脂質、極性水溶性代謝物の解析を実施する。さらに、代謝物を特定する場合にはタンデムマス(MS/MS)を用いて構造解析する。また単一細菌マウスで変動する代謝物のみを選び出し、グルーピングすることによって、細菌特異的メタボロームプロファイリングを構築することが可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メタボローム解析はサンプルを同時に解析する必要があるが、次年度に包括的なメタボローム解析を予定しており、その費用に充てるため メタボローム解析は、まずすべてのサンプルをガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)にて水溶性低分子代謝物と脂肪酸について解析する。またGC-MSに加え、液体クロマトグラフィー質量分析計による脂質、極性水溶性代謝物の解析を実施する。さらに代謝物を特定する場合にはタンデムマスを用いて構造解析を行う。
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Research Products
(5 results)