2014 Fiscal Year Annual Research Report
新規浸透圧・メカノセンサー分子の探索と生理機能解明
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25293055
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 弘史 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10454935)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 浸透圧 / メカノセンサー / バゾプレッシン / 蛍光タンパク / 遺伝子改変動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目(平成26年度)は、以下の研究を行った。(1)バゾプレッシン-eGFPトランスジェニックラットの視床下部視索上核から大細胞性神経分泌ニューロンを単離し、蛍光顕微鏡下にeGFP蛍光を指標としてバゾプレッシンニューロンを同定した。その後、ホールセルパッチクランプ法を用いて酸に対するバゾプレッシンニューロンの膜電流の変化を検討したところ、酸(pH5.5溶液)によって非常に大きな内向き電流が惹起された。また、この酸誘発性内向き電流はアミロライドの前投与により有意に抑制された。オキシトシンニューロンでは非常に小さな酸誘発性内向き電流を記録できるのみであり、バゾプレッシンニューロンに特異的な電流であると考えられ、この電流を惹起するチャネル分子は、浸透圧とバゾプレッシン分泌に関連する可能性がある。(2)浸透圧・メカノセンサー分子の候補としてTRPV1およびTRPV4が考えられる。そこで、TRPV1ノックアウトマウスおよびTRPV4ノックアウトマウスを用いて高張食塩水腹腔内投与および24時間脱水による浸透圧刺激、ポリエチレングリコール(PEG)皮下投与による容量減少およびアンジオテンシンII(AII)の脳室内投与に対する飲水行動の変化について検討した。その結果、浸透圧刺激による飲水行動には、野生型、TRPV1ノックアウト、TRPV4ノックアウトのすべてのマウスのグループで有意差はなかった。PEG投与では、TRPV4ノックアウトマウスで有意に飲水量が少なかった。AII投与では、TRPV1ノックアウトマウスで惹起される飲水量が有意に少なかった。したがって、TRPV1およびTRPV4は、浸透圧のみならず容量減少やAIIの変化を感知して飲水を引き起こす分子である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目(平成26年度)は、バゾプレッシンニューロンをeGFP緑色蛍光を指標に生細胞のまま同定できるという利点を活かし、バゾプレッシン-eGFPトランスジェニックラットの視床下部視索上核から大細胞性神経分泌ニューロンを単離してホールセルパッチクランプ法を用いてバゾプレッシンニューロンから電気記録を行い、浸透圧感受性分子群の候補を探索した。また、浸透圧・メカノセンサー分子の候補としてTRPV1およびTRPV4に着目し、TRPV1ノックアウトマウスおよびTRPV4ノックアウトマウスを用いて浸透圧感受性について飲水行動を指標に検討した。これらの結果から、浸透圧・メカノセンサーの有力な候補を絞り込むことができた。 一方、初年度(平成25年度)に見出したバゾプレッシンニューロンへのSACs(stretch-activated ion channelsの略)の発現と浸透圧感受性分子として生体で機能しているかどうかについては今後の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成27年度)は、新規の浸透圧・メカノセンサー分子の探索を継続しながら、これまでの結果を踏まえて候補分子群についての詳細な検討を行う。特に、バゾプレッシンニューロンに発現している浸透圧・メカノセンサー分子として、酸感受性ASICs、TRPV1およびTRPV4に着目し、それらの分子群と神経活動およびバゾプレッシン分泌との相関について検討していく予定である。
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