2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25293056
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
本多 真 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (50370979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 亨 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (20195746)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナルコレプシー / 脂質代謝 / 夜間睡眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
強度な眠気を呈するナルコレプシーには脂肪酸代謝異常が存在し、L-カルニチン補充で脂肪酸代謝を賦活すると、眠気が改善する(睡眠日誌に記載される日中居眠り時間が有意に短縮する)。その奏功機序としてL-カルニチンに睡眠持続性の改善があるとの仮説を検証した。 動物を用いた睡眠脳波測定では、L-カルニチン投与による脳内遺伝子発現変化はあるものの、睡眠脳波改善効果より個体差が大きい状況であり、正常睡眠を示す若年マウスでは明確な効果が示されない可能性が考えられた。現在解析法や動物数について引き続き検討中である。 臨床研究ではまず3例のナルコレプシー患者を対象とし、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査での睡眠状態を評価して、L-カルニチン服用効果を検討した。睡眠ステージ遷移確率を用いて睡眠持続性を評価すると、特に睡眠後半におけるレム睡眠の安定性改善が全例で共通してみられた(レム睡眠から覚醒への移行確率が減少し、レム睡眠からレム睡眠への移行(継続)確率が増加する)。またパイロット研究の際に、入院PSG検査と平行して簡易脳波計での睡眠ステージ判定を行ったところ、簡易脳波計による睡眠判定はPSG検査と平均して88.6%(83.2-88.8%)という一致率を示し、通常のPSG検査における評価者間一致率と同程度であった。そこで夜間中途覚醒を示す20例の過眠症患者を対象とし(L-カルニチン有効例の特徴を抽出するため、ナルコレプシー以外の過眠症を対象として含めた)、簡易脳波計を用いて睡眠脳波を測定しつつ、L-カルニチン補充効果を検証する臨床研究を行った。現時点で予定通り全例のエントリーが終了している。これまでのところ、主観的な症状変化についてのコメントでは、ナルコレプシー症例に「中途覚醒が減少した」、「間食せずに熟睡できる」等と話す著効例が多く見られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度および27年度にかけて、過眠症症例20例を対象とし、睡眠脳波の持続性をエンドポイントとしたL-カルニチン臨床研究を計画していたが、当初計画より症例のエントリーが順調にすすみ、平成26年度中に20例全例での2回の脳波測定が終了した。 研究協力者の睡眠習慣の変化や主観的な感想からは、夜間睡眠改善作用がみられる場合が多いことが予測され、順調な研究進行となっている。平成27年度はこの臨床研究によって得られた血液検体、自記式質問紙、および睡眠脳波のデータの多角的な解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎実験については、昨年までの研究を継続し、L-カルニチン投与による睡眠脳波の変化についてデータ数を増やした検討を行うとともに、メタボローム解析による代謝物の変化とこれまでに得られている遺伝子発現変化の関連解析をすすめ、L-カルニチンの作用機序を明らかにする。 臨床研究については、平成26年度にエントリーが終了した20例を対象としたL-カルニチンー脳波測定臨床研究について、研究完了後に得られた睡眠データ(電気生理検査記録)、眠気や夜間睡眠状態やQOLに関する関する主観的データ、そして血液中の生化学/遺伝子指標を合わせた解析を行う。脳波データについては睡眠持続性指標として提唱されている様々な評価を試みるが、特に睡眠後半における睡眠ステージ遷移確率を用いた検討を進める。主観的変化については、アンケートデータに加え、(研究代表者の外来通院例を被験者としている関係があり)個別症例の生活変化を幅広く聴取して有効性の判定を行う。生化学的な血液検体検討については、血中(白血球)の脂質代謝関連遺伝子(および動物基礎実験で関連が示される遺伝子)の発現変化を定量的RT-PCRで定量比較し、また赤血球および血清をもちいた個別アシルカルニチン定量(タンデムMS法)をすすめて、CPT1機能指標を算出する。主観的臨床的変化と生理指標、生化指標を総合して解析し、L-カルニチンによる夜間睡眠改善―眠気改善の背景に、脂質代謝を含めどのようなメカニズムがあるか、そしてどのような症例にL-カルニチンが最も有効であるかを明らかにする。有効例の判別ができれば、臨床応用につなげたい。
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Causes of Carryover |
前年度に臨床研究の進展にあわせて前倒し請求をしていたが、当初予定していたカルニチン服用前後で各2回ずつの睡眠脳波記録のうち、実際に解析が可能な(睡眠時間が解析必要最低限に達する、あるいは電極はずれなどの問題がない)データ数が少なくなり、検査とその解析にかかる外注費用が節減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
あわせて採取した血液検体の代謝指標の解析内容を充実させること、また成果の報告のための学会参加費用に用いる。
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Research Products
(3 results)