2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25293056
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
本多 真 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (50370979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 亨 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (20195746)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カルニチン / ナルコレプシー / 睡眠脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
過眠症(ナルコレプシーおよび近縁過眠症)23症例に対するL-carnitine有効性を、主観的改善(生活/活力改善、情動脱力発作改善)および客観的指標(睡眠脳波変化)について検証し、さらにL-carnitine に反応性を示す群の特徴を明らかにした。 対象は外来通院中の過眠症患者23例(睡眠障害国際分類第2版に基づく診断分類により、情動脱力発作を伴うナルコレプシー18例、情動脱力発作を伴わないナルコレプシー5例、男/女=10/13、35.8±7.3歳)である。8週間のL-カルニチン680mg経口投与の前後(baseline期とcarnitine期)において、質問紙による主観的評価(症状および日常生活での体調)と、簡易型脳波計(SleepScope)[一部入院終夜睡眠ポリグラフ検査を平行して行う]を用いた睡眠脳波での評価を行った。 L-カルニチンは23例中9例(39%)で日常生活における主観的な日常生活での体調を改善した。体調改善がみられる例では、QOL尺度(SF36)の活力subscaleの有意な改善がみられ(p<0.001)、また客観的指標として睡眠効率も改善傾向を示した(p=0.07)。また情動脱力発作を伴うナルコレプシー18例に限定すると、そのうち4例(22%)でL-カルニチンにより主観的な情動脱力発作の改善が見られた。情動脱力発作改善群では、睡眠段階遷移指数(1時間あたりの睡眠段階移行数)が有意に減少していることが判明した。 以上より、L-carnitineは、1. 夜間の睡眠効率が改善することに伴って、活力と主観的な体調改善が生じること、2.夜間睡眠における睡眠段階遷移を減らすこと(睡眠段階の持続性安定性が改善すること)に伴って情動脱力発作の改善をもたらすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究は予定通り施行し完了した。簡易型脳波計による測定は、基本的に被験者在宅のまま行われるため、日常生活を反映した記録が収集できる長所がある。しかし一部の症例では様々な事情で生活が不規則となり、夜間睡眠時間が短かったり、中途覚醒時から活動して朝再入眠するという分断睡眠をとるなど、結果の変動がみられた。 さらに主要エンドポイントとして設定していた睡眠脳波記録の解析に先立ち、過眠症症例における簡易型脳波計による睡眠段階判定の信頼度の確認が必要となり、終夜睡眠ポリグラフ検査と簡易型脳波計の同時記録による一致率の検証により信頼性の確認を行い、一致率が担保される条件(夜間睡眠障害合併例を除外するなど)を確定したうえで、最終的解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究の解析過程において、睡眠段階遷移指数は夜間睡眠の持続性安定性の客観指標となることを見出した。特に情動脱力発作改善群では夜間睡眠段階の移行回数が減少するという興味深い知見を見出した。夜間睡眠における睡眠段階の移行の多さはナルコレプシーの病態である睡眠覚醒状態の不安定性を反映するものであり、それが日中覚醒中に生じる情動脱力発作―レム睡眠段階の構成要素である筋弛緩が意識水準と乖離して生じるものーを反映しうることを示す。 また主観的な体調改善を指標として選択されるL-カルニチン有効群では、夜間睡眠効率の改善が見られた。L-カルニチンの作用点として、その分子機序から脂肪酸代謝改善が想定される。本研究の結果からは、L-カルニチンが夜間睡眠の安定性や睡眠効率の改善につながるような過眠症症例については、脂肪酸代謝が夜間睡眠の質と密接に関連することが示唆された。 過眠症関連遺伝子として見出してきたCRAT遺伝子型多型が、睡眠段階遷移指数と関連傾向をもつことが判明したため、今後症例数を増やして睡眠脳波解析とCRATの遺伝子型の関連を検討し、L-カルニチン有効例の判別補助として、睡眠段階遷移指数の検討とCRATリスクアリルの有無を用いる予定である。
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Causes of Carryover |
2016年6月に開催される学会SLEEP2016(アメリカ、デンバー市)に参加をし、研究成果を発表するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカまでの渡航費、滞在費、学会登録費に充当する。
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Remarks |
ナルコレプシーと生活 Medical Note https://medicalnote.jp/contents/160223-008-QC (2016/02/26公開) 簡単に紹介
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Research Products
(3 results)