2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロバイオーム解析とメタボローム解析による神経性食欲不振症の病態機序解明
Project/Area Number |
25293167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 千春 九州大学, 大学病院, 教授 (80117100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 信行 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60304812)
古賀 泰裕 東海大学, 医学部, 教授 (60170221)
河合 啓介 九州大学, 大学病院, 講師 (80325521)
高倉 修 九州大学, 大学病院, 助教 (40532859)
古川 智一 九州大学, 大学病院, 助教 (70617365)
森田 千尋 九州大学, 大学病院, その他 (30448419)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経性食欲不振症 / 腸内細菌 / メタボローム |
Research Abstract |
近年、先進国においては神経性食欲不振症(Anorexia nervosa:以下ANと略)患者が増加しており、社会的にも大きな関心を集めている。ANの発症・増悪メカニズムを明らかにし、早期診断、治療、予防法の開発が急務とされているが、その病態は十分に解明されていない。本研究では、AN患者における腸内フローラ解析(マイクロバイオーム)とメタボローム解析(メタボロミクス)を通じて、ANの病態解明や標準的治療法の確立に資する重要な知見を得ることを目的としている。 本年度は、AN患者および健常女性を対象にその腸内フローラをリボゾームRNAを解析対象とした定量的RT-PCR法(全自動腸内フローラ解析システム:YIF-scan)を用いて比較、検討した。AN患者の適格基準は、年齢は12歳から50歳までの女性AN患者であり、診断はアメリカ精神医学会精神疾患診断時計マニュアル第IV版のAN基準を満たし、文書によって同意を得られたものとした。 その結果、AN患者の腸内総細菌数は、年齢を一致させた健常者に比べ、総細菌数、最優勢菌群であるClostridium, Bacteroidesなどが有意に減少していた。病型別解析では、制限型、排出型ともに総細菌数、最優勢細菌群の菌数が減少していた。 以上の結果は、AN患者の腸内では腸内細菌叢の異常、いわゆるdysbiosisが生じており、dysbiosisはANの消化器症状や病態形成に関与している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではエントリー基準を満たすAN群患者群の確保が必要となるが、現在までにAN患者群23名、年齢を一致させた健常者13名よりの便、血漿を採取している。またAN患者群10名において治療開始後の糞便、血漿を採取し、保存している。このように患者のエントリーはおおむね順調に進展しており、本年度中には目標症例数に達する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に引き続き、以下の課題1、課題2を行い、AN患者に認められるdysbiosisの全貌を明らかにしていく。 課題1.被験者の選択あるいは対象 ・適格基準:15歳以上から40歳までの構造化面接においてアメリカ精神医学会精神疾患診断統計マニュアル第IV版のANの診断基準を満たし、文書によって同意の得られた外来および入院患者30名(AN患者群)。およびAN群と年齢を一致させた健常女性30名(コントロール群)。AN患者群においては、主治医から説明、同意取得を行う。また広告によって募集したコントロール群は、研究実施担当者が説明、同意取得を行う。その後、適格、除外基準を用いて対象者を選択する。 課題2.AN患者群において、体重増加によるマイクロバイオーム、メタボロームの変化を経時的に測定する。糞便・血漿サンプルの採取、食事摂取量の調査、心理・生理・生化学的検査は、ベースライン、1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目の4ポイントで行う。ベースラインは脱水や電解質異常が改善された入院後2~3週間後と定義する。またベースラインの体重から20%の体重増加を認めた時点においても同様の解析を加える。食事量は食事量を目視で確認し、食事トレーの食前と食後の写真を撮影し、それを用いて摂取カロリーを算出する。呼気ガス分析によって基礎代謝量を測定し、活動量計(アクティグラフ)を用いて活動量を測定し、これらを合わせて消費カロリーを算出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メタボローム解析はサンプルを一斉に解析する必要があるが、次年度にAN患者群および健常群の包括的メタボローム解析を予定しており、その支出にあてるため。 血漿を対象としたメタボローム解析はまず、全てのサンプルをガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)にて水溶性低分子代謝物と脂肪酸について解析する。また、GC-MS に加え、液体クロマトグラフィー-質量分析計(LC-MS)による脂質、極性水溶性代謝物の解析を実施する。さらに、代謝物を特定する場合にはタンデムマス(MS/MS)を用いて構造解析する。
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Research Products
(7 results)