2014 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザの進入部位を標的とした感染誘発気管支喘息発作の新規治療法の開発
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25293189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山谷 睦雄 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60261640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / セリン プロテアーゼ / 気道上皮細胞 / 気管支喘息 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:インフルエンザウイルスの進入阻害による感染抑制の研究のため、ヒト気道上皮細胞を用いて以下を検討した;1)気管上皮細胞におけるプロテアーゼ発現の確認、プロテアーゼ阻害薬のウイルスRNA複製・HA蛋白開裂抑制作用。2)喘息合併患者の鼻粘膜上皮細胞におけるプロテアーゼ阻害薬のウイルス増殖抑制作用。 方法:ヒト気管上皮細胞のプロテアーゼ発現の確認を行った。新型インフルエンザ(A/H1N1 pdm 2009)ウイルスと季節性インフルエンザ(A/H3N2 New York)の細胞内ウイルスRNA複製量、HA蛋白の開裂を解析した。さらに、プロテアーゼ阻害薬によるウイルスRNA複製量抑制作用、プロテアーゼ阻害薬カモスタットのHA蛋白の開裂抑制作用を解析した。鼻ポリープ粘膜上皮細胞のウイルス放出量、細胞内ウイルスRNA複製量と、プロテアーゼ阻害薬のウイルス放出量減少作用を測定した。 結果:ヒト気管上皮細胞実験;1)細胞はセリン・プロテアーゼに分類されるtransmembrane protease serine 2 (TMPRSS2)、TMPRSS4、TMPRSS11を発現し、プロテアーゼ阻害薬はこれらの酵素の発現を変化させなかった。2)プロテアーゼ阻害薬はウイルスRNA複製量を減少させた。抑制効果はナファモスタット、カモスタット、アプロチニンの順であった。3)感染細胞はHA0蛋白を開裂して活性化した。カモスタットはHA0蛋白の開裂を抑制した。喘息合併患者の鼻ポリープ粘膜上皮の実験;1)細胞外にインフルエンザウイルスを放出させ、細胞内ウイルスRNAを複製した。2)プロテアーゼ阻害薬のナファモスタット、カモスタットはウイルス放出量を減少させた。 結論:ヒト気管上皮細胞におけるセリン・プロテアーゼの発現、プロテアーゼ阻害薬によるウイルスRNA複製量減少が明らかになった。喘息合併患者の鼻ポリープ粘膜上皮細胞におけるプロテアーゼ阻害薬のウイルス放出量減少効果が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由:当初の計画に沿って研究が実施されている。すなわち、ヒト気管上皮細胞がセリン・プロテアーゼを発現してインフルエンザのヘマグルチニンを活性化させ、インフルエンザの進入以降の増殖過程を促進していることが明らかになった。また、プロテアーゼ阻害薬がヘマグルチニンの活性化段階を抑制させ、ウイルスの増殖を抑制することが明らかになった。さらに、気管支喘息合併患者の鼻粘膜上皮細胞においてインフルエンザウイルスが感染すること、およびプロテアーゼ阻害薬がウイルス放出を減少することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト気管上皮細胞の細胞膜におけるセリン・プロテアーゼの蛋白発現を確認し、論文投稿の予定にしている。さらに、気管支喘息合併患者におけるセリン・プロテアーゼ阻害薬のインフルエンザウイルス感染誘発の気道炎症抑制効果を明確にするため、気管支喘息合併患者の鼻粘膜上皮細胞におけるウイルス増殖量およびIL-6の放出量に関して、喘息非合併患者の細胞と比較検討する。
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