2014 Fiscal Year Annual Research Report
新しい多能性幹細胞(Muse細胞)を用いた脳梗塞の再生治療の戦略的研究
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25293305
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
黒田 敏 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (10301904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑山 直也 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30178157)
早川 由美子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教務補佐員 (30238092)
出沢 真理 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50272323)
柏崎 大奈 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (50374484)
秋岡 直樹 富山大学, 大学病院, 助教 (70422631)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経再生 / 脳梗塞 / Muse細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト骨髄からフローサイトメトリーを用いてMuse細胞を単離したのち培養した。Muse細胞をヌードマウス脳梗塞モデルに定位的に大脳に移植した。Muse細胞を含む骨髄間質細胞や、骨髄間質細胞からMuse細胞を取り除いたnon-Muse細胞を同様にヌードマウス脳梗塞モデルに移植した。各群におけるヌードマウスの運動機能、高次脳機能を経時的に定量解析したのち、6週間後に組織学的評価を実施した。Muse細胞は大脳に生着して神経細胞に分化するとともに運動機能や高次脳機能の改善を促進した。これらの成果はPLOS ONE誌に報告した。 剖検から得られた骨髄の標本を用いて、骨髄中におけるMuse細胞の分布などについて組織学的評価を実施した。その結果、年齢とともにMuse細胞が減少すること、生前に化学療法を実施された例ではMuse細胞がきわめて少ないことが判明した。さらに、急性期脳梗塞患者29例を対象とした臨床研究を実施した。経時的に採血して末梢血をフローサイトメトリーに供することで、末梢血中のMuse細胞数を定量的に解析した。その結果、発症から1~4週間後にかけて末梢血中のMuse細胞数は増加すること、その増加を喫煙が抑制し飲酒が促進することが判明した。現在、これらの成果をStroke誌に投稿準備中である。 これらの研究に付随して実施した研究では、骨髄間質細胞が神経栄養因子を産生することで神経細胞を保護していること、骨髄間質細胞から成る細胞シートが脳梗塞の治療に有用であること、抗血小板剤の一つであるシロスタゾールが脳梗塞に際に神経細胞を保護することなどを明らかとし、それぞれNeurorehab Neural Repairs誌、Brain Res誌、J Tissue Engineer Regen Med誌などに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた以下の4つの研究目標のうち、前項9.に記したごとく、a), b), d)の研究を既に終了して国際的にも知名度の高い雑誌に掲載あるいは投稿を済ませている。現在、c)の研究を実施中である。 a)「Muse細胞」の中枢神経における生物学的特性を明らかとする b)健常人における骨髄中「Muse細胞」の分布 c)健常人における末梢血中「Muse細胞」の動態、生物学的特性 d)脳梗塞急性期における末梢血中「Muse細胞」の動態、生物学的特性
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Strategy for Future Research Activity |
この3年間の研究成果に基づいて、Muse細胞が中枢神経において恒常性を維持するために機能している機構を明らかにする予定である。具体的には、既に悪性グリオーマを対象とした研究の初期成果を得ている(未公開データ)。すなわち、悪性グリオーマの組織標本においてMuse細胞が散見されており、腫瘍細胞を標的とした反応と考えられていることから、成体由来の幹細胞を用いた新たな治療戦略を構築すべく研究を進めている。 また、これらの研究と平行して、この3年間の研究で蓄積した技術と知識を最大限に活用すべく、成体に存在する幹細胞がどのようにヒトの恒常性の維持に寄与しているのか?どのようなメカニズムを介して疾患の発生や再生に関与しているのか?について、今後も研究を進める予定である。既に開始している研究としては、Muse細胞と同様、骨髄から末梢血中に放出される血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell; EPC)が頚動脈プラークの形成と不安定化に寄与していることが明らかとなりつつある。また、もやもや病患者の末梢血中ではEPCが著明に減少していることもフルーサイトメトリーを用いた研究で既に結果を得ている。さらに、悪性グリオーマの腫瘍幹細胞において特異的に発現している酵素を見出しており、この酵素を標的とした新しい治療法の開発を目指した研究を遂行中である。
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Research Products
(12 results)