2015 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児のためのコ・エンロールメント教育プログラム開発に関する海外調査研究
Project/Area Number |
25301054
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
鳥越 隆士 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10183881)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 聴覚障害児 / インクルーシブ教育 / 手話 / コ・エンロールメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,インクルーシブな学習環境にある聴覚障害児童のためのコ・エンロールメント教育プログラム(通常の学級で聴児と聴覚障害児が共に学び,手話と音声言語の活用に配慮したチームティーチングによる指導)の開発に関する海外調査を行うものである。本年度は,これまでの調査で明らかになった,コ・エンロールメント・プログラムの2つのサブタイプ:手話通訳優位モデルとコ・ティーチ優位モデルのそれぞれの授業の形態について詳細に分析した。前者に関しては,米国のプログラムを取り上げ,教室活動のエピソードから10のカテゴリー(言語の自由な選択,ローカルな手話の空間,聴児の手話学習,手話と音声の同時使用,声の機能,相互の助け合い,オーバーヒアリング,教師による情報のコントロール,教師間の協働,通訳の役割)が生成できた。通訳の役割に関しては,多くの「良い実践」と「課題」が見いだされ,このモデルの成否に関わっていることが示唆された。またイタリアのプログラムでは,教師へのインタビューが行われ,教師がこのプログラムをどのように認識しているかを明らかにした。後者のモデルについては,ノルウェーのプログラムの教室活動を詳細に分析した。自由な言語選択,ローカルな手話空間,聴児の手話学習,声の機能,手話と音声の同時使用,聴児と聴覚障害児の関わりなど,前述のモデルと共通のカテゴリーが見いだされた。他方,教師の役割や聴児と聴覚障害児の関わりについては,教師の協働,聴児による聴覚障害児への支援や相互に学びあう,教えあうなどのエピソードが多く見いだされ,これらが教室活動で手話通訳に代わる重要な機能を担っていることが示唆された。今年度はさらに,聴覚障害児のためのインクルーシブ教育実践の拡がりをさらに検討するため,フィンランドでの聾学校と通常の小学校の統合プログラムについても現地調査した。
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