2014 Fiscal Year Annual Research Report
考古遺物等を通じたベトナム木造建築様式の形成過程に関する研究
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25303026
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
友田 正彦 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 保存計画研究室長 (70392553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 省一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60343117)
清水 真一 徳島文理大学, 文学部, 教授 (70359446)
上野 祥史 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (90332121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 建築史 / 考古学 / ベトナム / 木造建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究第2年次である本年度は、中国国内における比較検討資料収集とベトナム北部出土の建築型土製品及び関連遺物の網羅的把握のため、3次にわたって現地調査を実施した。 1. 中国専門家との意見交換および建築調査:平成26年9月2日から7日まで、北京市において建築史家の楊鴻勛氏ほか専門家から研究内容に関する助言を得たほか、同市内及び河北省石家荘市正定県所在の古建築(隆興寺摩尼殿、開元寺鐘楼ほか)を調査した。 2.比較検討資料収集のための中国国内調査:平成26年11月22日から27日まで、福建・広東両省における調査を実施した。宋・元・明代の木造建築(広東省徳慶県の徳慶学宮、肇慶市梅庵など)や、木造を模した石造建築(泉州市弥陀岩石室など)のほか、広州市内の南越王宮遺跡や博物館なども訪問し、情報収集と観察を行った。 3.遺物の悉皆的把握等のためのベトナム国内調査:平成27年3月1日から10日まで、ベトナム社会科学院都城研究センター職員とともに、ハザン、トゥエンクァン、イェンバイ、ハナム、バクザンの各省博物館において、展示室及び収蔵庫内遺物(可能だった場合のみ)の中から建築型土製品や瓦類をはじめとする考古遺物を対象に、観察、写真記録、スケッチ作成等の調査を行った。また、李・陳朝期の寺院遺跡等を訪問し、遺構状況に関する確認や聞き取り、発掘調査関連資料の収集等を行った。 本年度も、従来収集した遺物・遺構関連情報の整理・分析作業を継続した。 ここまでの調査結果から、現時点では、李・陳朝期のベトナム木造建築について想定される様式的特徴は、同時代の中国木造建築に直接的な類縁性を求めにくい部分が多いように感じている。さらに、李朝期と陳朝期の様式には一定の差異があり、後者においてベトナムならではの独自性がより追求された可能性が高いものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画では中国、ベトナムで各1回の調査を予定していたが、中国国内での調査対象を絞り込むため、同国専門家への聞き取りを主とする短期調査を追加実施した。いずれの調査においても、現地機関や現地専門家より十分な協力を得て円滑に調査を実施し、多くの情報を収集するとともに、考察のための知見を蓄積することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナムにおいては、ハノイ歴史博物館を含む未調査機関のほか、既に調査した地域でも収蔵庫内の未調査遺物等に関する補足調査を行い、関連遺物情報のさらに網羅的な把握を図る。また、ここまでに得た知見を参照しながら、黎朝期の現存木造建築に関する観察調査を行う。これまで蓄積してきたデータについては、最終的なとりまとめを行うとともに、その横断的な分析作業を試みる。本研究の目標であるベトナム木造建築様式の形成過程に関する考察としては、中国からの様式伝播を主軸に据える考え方だけでは限界も見え始めたところであり、他の来源も含めた様式の選択的摂取と独自性の確立という観点を加えながら、検討を行いたい。 研究の総括としては、関連分野のベトナム側研究者を交えて現地で研究会を開催する方向で、現地協力機関と調整中である。各地での遺構発掘成果も含めた現段階における最新の知見を共有するとともに、本研究の中から導き出される仮説を巡って幅広く意見を交換する場としたい。
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Causes of Carryover |
協力機関の事情によりベトナムでの調査時期が当初予定より遅くなったが、これに関する通訳者の同行期間が本人都合により短縮されたことで、その謝金額が減少したことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において実施する現地調査の経費等に充当することで、調査内容の一層の充実を図る予定である。
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Research Products
(4 results)