2015 Fiscal Year Research-status Report
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25330117
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
林 正博 東京都市大学, 工学部, 准教授 (30611553)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カスケード故障対策 / 数値実験 / 信頼性 / 大規模ネットワーク / 通信ネットワーク構成 / 故障率 / 故障頻度 |
Outline of Annual Research Achievements |
一部の故障が通信ネットワーク全体に波及するカスケード故障の発生について研究し、カスケード故障の被災規模を、互いに通信可能な最大の部分ネットワーク(最大連結成分)を用いた従来の分析ではなく、生き残った通信の通信量の大きさに着目した通信量残存率による分析と、通信量残存率が一定の値未満となる平均件数に着目したカスケード故障発生率の分析を行う研究を進め、分析用のソフトウェアを完成し、数値実験を行った。分析に必要な計算機使用時間については、50個のノードで数時間を程度で分析を終了できることを確認した。 数字実験の結果、まず、通信ネットワークを構成する要素(ノードとリンク)の通信容量に余裕を、必要最低限の2から3倍持たせることで、通信量残存率だけでなく、カスケード故障発生率も大きく改善されることを解明した。また、すべてのノードの故障率(単位時間当たりの平均故障発生件数)が同一である場合と、そうでない場合で、カスケード故障発生率が異なってくることを解明し、すべてのノードの故障発生率が均一である場合の方がそうでない場合よりもカスケード故障発生率は改善されることも解明した。これは、例えば、大企業において使用するルータを複数種類ではなく、均一にしておく方が、カスケード故障対策の観点からは有効であることを示している。 カスケード故障発生率は、想定して数値より大きい値であることが判明し、つまり、滅多に起きない現象であると思われていたが、実際に発生する可能性は無視できないほど大きい事実も判明した。また、カスケード故障の分析のための新たな数理技術として故障頻度の分析法や通信ネットワークの縮退法(カスケード故障と通常の故障対する耐性を変えずに通信ネットワークを単純化する)についても検討し、成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた分析のためのモデル、尺度、アルゴリズムを完成し、分析を行うソフトウェアも作成し、数値実験も十分行った。当初の計画では、通常の故障ではノードではなく、リンクの故障が重大な結果を引き起こす場合が多いという経験から、ノードは故障しないとして、リンク故障のみが発生しうるというモデルを想定していたが、現実について聞き取り調査をしたところ、むしろ、ノードの故障が本質的に重要であることが分かってきた。リンク、すなわち、光ファイバーは通信容量についてノードよりも弾力的運用が可能であり、ノードが通信容量オーバを起こす場合が多い。これを踏まえ、ほぼ完成していた分析用ソフトウェアを大幅に改造する必要迫られたが、現在、当初の計画に追いついた。 なお、対外発表については、フランスでの国際会議が、テロのため発表不可能となり、結果として発表について遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、遅れている発表と論文化を進める。次に、現在のモデルと尺度を用いて、例えば、トポロジーによるカスケード故障の耐性がどのように異なってくるかや、コアネットワークを二つに分割し、分割された部分ネットワーク内でのみ故障発生時のパス再計算をやり直すなど、対策の幅を広げ、実際的な対策へと結び付けていく。また、分析にも散る基礎パラメータ(故障率など)について、より実際的な数値を調査し、現実に、例えば、100以内に大規模なカスケード故障が発生する確率を算出することで、現実のカスケード故障発生の時期の予想などに関する検討を行う。さらに、現在のモデルでは、カスケード故障発生時の被災規模を表す通信量残存率が、一つの通信ネットワークについて一つ定まるようになっているが、実際には、東京―大阪間、名古屋―北海道間など対地ごとに影響が異なり、すなわち、同じカスケード故障が発生しても、ユーザによって被災の程度は大きく異なったものになることを踏まえ、対地毎の通信量残存率に相当する指標を導入する研究を行う。
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Causes of Carryover |
2015年末にフランス開催の国際会議を予定していたが、パリのテロ発生のため参加を中止した。その結果、フランスでの国際会議への渡航費用、掲載費用としていた金額が計画通りに支出できなかった。また、国際会議での発表を前提に、論文を数件、執筆・投稿する予定であったが、スケジュールが大きくずれてしまった結果、次年度への投稿を余儀なくされている。これらに関する支払いの延期が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた国際会議に代わる国際会議への投稿、それに続く論文投稿費用に使用する。なお、現状、関連論文の査読の結果、最新計算機による計算結のやり直しが必要となる可能性が生じており、それに伴う最新計算機の購入などに利用する。
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Research Products
(6 results)