2014 Fiscal Year Research-status Report
大自由度力学系のレアイベントサンプリングと極限リスク解析
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25330299
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
伊庭 幸人 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30213200)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レアイベント・サンプリング / モンテカルロ法 / インポータンス・サンプリング / 逐次モンテカルロ法 / 確率台風モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
通常のシミュレーションでは低い確率でしか起こらない現象を積極的にサンプルしつつ,その生起確率をバイアスなく計算する手法とその応用を研究している.今年度の研究においては,レアイベントサンプリングの手法としての「時間逆転シミュレーション」の手法を理論的に完成し,簡単な事例で有効に働くことを実証した.当該手法は,マルコフ連鎖,雑音を含む差分方程式,確率微分方程式などに基づく確率的シミュレーション一般に適用できる.手法の根幹をなす着想は,ターゲットとなる事象から時間を逆転させて解く「時間逆転シミュレーション」であるが,問題は単純に逆転させた場合に起きる確率のバイアスをどのように補正するか,という点である.バイアスの原因には(1)時間逆転の計算を容易にするための近似に由来するもの(2)経路の束の多様性(エントロピー)に由来するもの,があるが,これらはともに,経路に重みを載せて,sequential importance sampling (SIS),あるいはsequential Monte Carlo (SMC)の考え方を応用することで補正可能である.今年度は,確率台風モデルを実例として,高柳慎一氏(総研大博士課程)と協力して,この理論の実装と実証を行い,うまく機能することを確かめた.また,連続時間極限において直観的な意味の明らかなウェイトの表現が得られることがわかった.これらの結果は,第17回情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2014),および,国際研究集会「rare event sampling and related topics II」で発表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「時間逆転シミュレーション」という新しい方法論の基礎を開発し,その正当性と効率を確率台風モデルという実際的なモデルで検証することができたので.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究の発展として (1)気象学などでモデル系として使われるローレンツ96( Lorenz 96 )と呼ばれる確率的結合写像系でも実装を行い,多変数・高次元の場合の特性を調べる.また逐次モンテカルロ法での粒子分裂の効果を調べる. (2)逆に解いたとき,初期値が「ありそうもない領域」に行くのを防ぐための「事前分布」の効果を調べる. (3)カオス的な系での振る舞いを調べる. (4)高速の並列機への実装を行う. などを計画している.また,研究成果の論文化も急ぐ.
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Causes of Carryover |
海外からの出張者の講演日が年度のほぼ最終になるなど,種々の不確定性があったため,余裕をもって使用したので次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費の一部として使用する.
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