2013 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖立体構造の網羅的モデリングとデー タベース開発
Project/Area Number |
25330358
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
李 秀栄 独立行政法人理化学研究所, 杉田理論分子科学研究室, 研究員 (50390670)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | N型糖鎖 / 立体構造予測 / 分子動力学計算 / レプリカ交換法 / イオンモビリティー質量スペクトル / 衝突断面積 |
Research Abstract |
糖鎖研究は急速に進歩しており、様々な生命現象や疾患における糖鎖機能が明らかになってきている。しかし、糖鎖の高い運動性や不均一性が原因で従来の構造生物学的手法による構造決定は困難を極めており、糖鎖機能の仕組みについて明らかになっていることは少ない。本申請課題では、種類や長さ、分岐構造の異なる多種のN型糖鎖を対象にして、計算化学手法を用いた網羅的な立体構造モデリングを行い、得られた立体構造情報に基づき糖鎖の定量解析が可能なイオンモビリティー質量分析データを予測しデータベース化することを目的する。平成25年度は、分子シミュレーションの実施に必要な力場開発と多種の糖鎖構造を対象にした網羅的構造探索に注力を注いだ。以下にその成果をまとめる。 (1) イオン化糖鎖とPA化糖鎖の力場を新たに開発した。新たな力場を用いたテスト計算を行い、量子化学計算の結果を良く再現すること、及び分子動力学計算でも正常に動作することを確認した。 (2) レプリカ交換分子動力学計算を用いて、10種類のN型糖鎖について網羅的な構造探索を実施した。各糖鎖について、計算から得られた構造の多形性を特定し、糖鎖長や分岐構造との関係を明らかにした。柔軟性が高いとされる1-6グリコシド結合から伸びる分岐鎖の長さが、構造の柔軟性に大きな影響を与えることがわかった。 (3) 分子動力学計算の結果に基づき、4種類の糖鎖についてイオンモビリティー質量スペクトルデータを計算し、実験データと良く一致する結果を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に比べ、新たな力場の開発と検証に多くの時間を費やした。 しかし、その後の構造探索は、計算資源の利用状況が良かったこともあり、非常に順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基本的な変更はない。今後、まずは残りの糖鎖についてイオンモビリティー計算を完了させる。 そして、計算結果の構造多形解析を進め、構造多形とイオンモビリティーとの関係解明に注力を注ぐ。 多形解析を可能な限り多様な角度から行い、データベース化に必要な基本情報を揃える。
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