2014 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖立体構造の網羅的モデリングとデー タベース開発
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25330358
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
李 秀栄 独立行政法人理化学研究所, 杉田理論分子科学研究室, 研究員 (50390670)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | N型糖鎖 / 立体構造予測 / 分子動力学計算 / レプリカ交換法 / イオンモビリティー質量スペクトル / 衝突断面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、細胞表面の多様な糖鎖を特定するために、計算化学手法を用いて網羅的な立体構造モデリングを行い、得られた立体構造情報に基づき糖鎖の定量解析が可能なイオンモビリティー質量分析データを予測しデータベース化することを目的する。平成26年度は、前年度に開発したピリジルアミノ化及びプロトン化糖鎖の新たな力場と、それを用いて衝突断面積(Collision cross section: CCS)を計算するプロトコルを実験データの得られている10種類のN型複合型糖鎖の衝突断面積計算に応用した。以下に、本年度の応用計算から得られた結果を要約する。
(1) 全ての化合物について、実験から求めた衝突断面積値を非常に良く再現することに成功した。 (2) 衝突断面積の値と立体構造との関連を調べ、柔軟性の高い1,6鎖の長さが衝突断面積値に影響していることを見出した。具体的には、柔軟性の高い1,6鎖の末端がガラクトシル化し長くなった糖鎖では、1,6鎖がキトビース部分へと「フォールド」したロッド形状をとり、その結果大きなCCS値を示す一方で、1,3鎖がガラクトシル化した糖鎖では、柔軟性が低いため十分にフォールすることができず球状となり、結果小さな衝突断面積値を示すことが明らかになった。
以上の結果は、イオンモビリティー質量分析法と分子動力学計算の有機的な連携が、今後、糖鎖構造の精密な特定だけではなく、糖鎖立体構造の新たな解析法としても有用であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
10種類の化合物のうち1種類の化合物で実験値との大きな違いが見られ、その要因を明らかにし修正するのに時間を要した。実験との違いがでた要因は、その糖鎖構造が他の糖鎖に比べて短くプロトン化状態がことなることにあることがわかった。新たなプロトン化状態を構築し計算した結果、実験との良い一致が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基本的な変更はない。最終年度となる本年は、糖鎖の立体構造とCCS値の関連性を定量化することに専念し、データベース化に必要な基本情報を揃える。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が予定よりも若干遅れたため、学会発表による旅費の支出および、英文校閲を含め論文執筆にかかる費用が予定額より少なかったことが主な要因です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究における問題点は解決し良好な結果が得られたため、生じた次年度使用額は、学会における研究成果発表、および論文執筆費用にあてる予定です。
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