2013 Fiscal Year Research-status Report
鉄イオンのレドックスサイクル促進による難分解性有機物の完全酸化分解
Project/Area Number |
25340070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 浩行 京都大学, 環境科学センター, 准教授 (40263115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Fenton / フェノール / 完全酸化分解 / 銅イオン / シュウ酸 |
Research Abstract |
水中の有機汚染物質をFenton酸化を利用して効率的に分解する手法の開発を目指し、銅イオン添加の効果について検討した。 モデル有機汚染物質としてフェノールを用い、鉄イオンおよび銅イオンの初期濃度がフェノールの完全酸化分解率(有機炭素の二酸化炭素への転化率)、つまり有機炭素除去率におよす影響を調べたところ、Fe(II)の初期濃度が高くなるほど初期の酸化分解速度は向上するが、Cu(II)と共存している条件下では、最終的な完全酸化分解率は低くなることがわかった。Cu(II)の初期濃度については、濃度が高くなるほど分解速度は高くなり、最終的な完全酸化分解率も高くなった。100 mg/Lのフェノールに対し、0.1 mMのFe(II)と1.0 mMのCu(II)、20 mMのH2O2により、240分で94%の完全酸化分解率が得られた。光照射がない条件下でフェノールがこれほど完全に酸化分解されたのはこれまでにない結果である。Cu(II)の効果について検討したところ、Cu(II)とフェノールの分解で生成した還元性有機中間生成物が存在することにより、Fenton酸化では分解されず、Fe(II)の還元を抑制するシュウ酸が分解されることがわかった。これは、還元性中間生成物の一つであるヒドロキノンを用いた実験で、Cu(II)存在下でシュウ酸が分解されることで確認できた。このことから、Fe(II)の負の効果は、中間生成物の分解が初期に急激に進行し、還元性の有機物がほとんど存在しなくなるためと推定できた。また、Fe(III)とシュウ酸の結合状態を紫外吸光から検討したところ、Cu(II)がシュウ酸と錯体を形成し、Fe(III)-シュウ酸の相互作用が弱くなっていることがわかった。そのために、Fe(III)が還元されてFenton反応が進行し、高い完全酸化分解率を達成できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェノールの完全酸化分解率に及ぼすFe(II)とCu(II)の初期濃度の影響を検討し、ほぼ完全に酸化分解できる条件が、Fe(II):0.1 mM、Cu(II):1.0 mMであることを見出した。 Cu(II)は、還元性の有機物存在下において、シュウ酸と錯体を形成して非常に還元されにくい状態のFe(III)を還元するための触媒として作用することを見出した。その結果フェントン反応が持続的に進行し、通常のFenton酸化では分解されないシュウ酸も分解できるため、非常に高い完全酸化分解率を達成できることを明らかにした。 添加したCu(II)がシュウ酸を錯体を形成するため、Fe(III)-シュウ酸の相互作用が弱くなり、還元性の有機物でFe(III)が還元されてFe(II)が生成することを明らかにした。 以上の成果は、当初の研究計画通りに遂行された結果であり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
より効率的に有機物の完全酸化分解を進行させるため、銅イオンの添加と光照射の併用について検討を進める。光照射下で銅イオン添加Fenton酸化を実施し、光照射がない場合および銅イオン添加がない場合との比較(過酸化水素の消費速度およびTOC濃度の減少速度)より、光照射と銅イオン添加の組み合わせが、どの程度の効果を持っているのかを定量的に明らかにする。光照射の条件としては、光の強さ(量)だけでなく、波長や照射時間を検討する。波長については、ランプの種類(水銀灯、化学ランプ、蛍光灯、LED)を変えることで、効果の波長依存性を検討し、より安全で省エネルギーのプロセス開発を目指す。 フェノール以外の難分解性有機物の完全酸化分解についても、銅イオンの添加と光照射の併用について検討する。具体的には、染料として使用されているオレンジII、ニトロフェノール、ビスフェノールA、1,4-ジオキサンを取りあげる。特にジオキサンは、近年排水基準値が設定された難分解性有機物で、水に対する溶解度が非常に高く、また沸点も水とほぼ同じなために、その高度処理が大きな課題となっている。このような難分解性有機物を効率よく分解し、かつ完全酸化分解率も高めるための条件について検討する。
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