2014 Fiscal Year Research-status Report
鉄イオンのレドックスサイクル促進による難分解性有機物の完全酸化分解
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25340070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 浩行 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40263115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Fenton / 1,4-ジオキサン / シュウ酸 / 可視光LED / 光化学還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、難分解性有機物で、現在その処理が非常に問題となっている1,4-ジオキサンの分解についての検討を行った。通常のフェントン酸化で1,4-ジオキサンが分解できることを確認したが、1,4-ジオキサンの濃度が10mg/L以下という低濃度の廃液でないと規制値(0.5 mg/L)以下まで分解することができず、それよりも高濃度のものでは、十分な分解量を得られなかった。そのため、シュウ酸を添加することで、鉄イオンの光化学還元の促進を試みた。その結果、通常の光フェントン酸化では2時間以上の照射で得られる1,4-ジオキサンの分解量を10分程度達成することができた。さらに、200 mg/Lの1,4-ジオキサンを30分で規制値以下にまで濃度を下げることができた。これは、シュウ酸と3価の鉄イオンが形成する錯体が光を吸収し、3価の鉄イオンを2価に還元する反応が進行し、フェントン反応が促進させたからである。この光化学還元は、波長が500 nm以下であれば可視光でも進行することが知られている。そこで、プロセスの省エネルギー化を念頭に置き、照射効率が高く、可視光である白色LED光を光源として、1,4-ジオキサンの分解を行った。白色LED光でも、1,4-ジオキサンの分解は進行し、紫外線と同様、規制値以下まで濃度を低減することができた。消費電力あたりの分解量は、白色LED光を用いることで、紫外線ランプ(化学ランプ)よりも40%程度向上した。また、処理水の有機炭素濃度を測定したところ、1,4-ジオキサンがほぼ消失してから有機炭素濃度の低減が顕著になることがわかった。これは、フェントン反応で生成した活性ラジカル種であるOHラジカルは、1,4-ジオキサンと優先的に反応して1,4-ジオキサンを分解し、1,4-ジオキサンがほぼ分解してからその分解生成物と反応して完全酸化分解が進行することを表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
処理が困難な難分解性有機物の1,4-ジオキサンに対し、シュウ酸/Fe(III)錯体の光化学還元を利用することで、フェントン反応を促進し、継続的に分解できることを見出した。 光化学還元を利用することで、200 mg/Lの1,4-ジオキサンを30分で規制値である0.5 mg/L以下まで低減させることに成功した。 照射効率の高い白色LED光を用いても、紫外線と同様に鉄イオンの光化学還元を促進し、1,4-ジオキサンを分解できること、さらに紫外線ランプと比較して、消費電力あたりの分解量を40%程度向上できることを明らかにした。 以上の成果は、難分解性有機物である1,4-ジオキサンの分解技術に大きく寄与するものであり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
可視光LEDとシュウ酸を用いて鉄イオンの光化学還元を促進できることが明らかになった。そこで、種々の波長を持つ可視光LEDを使用することで、有効な波長を明らかにするとともに鉄イオン濃度、シュウ酸濃度が光化学還元の反応速度に与える影響を検討する。さらに平成25年度に得られた銅イオンの効果が光化学還元にどのような影響を与えるかの検討も行い、高効率な難分解性有機物の分解手法の提案を行う。
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