2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25340144
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
岡 敏弘 福井県立大学, 経済学部, 教授 (00231209)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 福島第一原発 / 放射性セシウム / 食品基準値 / リスク / 費用便益分析 / 水田吸収抑制策 / 果樹除染 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原発の事故によって放出された放射性セシウムの、食品を通じた摂取を防ぐために採られた規制と対策の費用と効果を測り、その比を余命1年延長費用として評価するのが研究の目的である。2015年度は、前年度までに行った、出荷制限や加工自粛の 費用と効果、および、米のセシウム吸収抑制策と柿の樹皮除染の費用と効果の結果から、費用が便益を超えないという意味で効率的な食品の放射能基準値を求めた。規制の便益は、食品からの放射線被曝を減らすことによる損失余命減少の便益として、余命1年あたり2000万円を想定した。 米では、農家からの出荷価格が230円/kgとすると、出荷を止めるという対策を採らせるに十分な放射性セシウム濃度は720Bq/kgとなった。これが効率的な基準値である。それに対して、水田の吸収抑制策という対策を採らせるに十分な玄米中の放射性セシウム濃度は390Bq/kgとなった。基準値を390Bq/kgにすれば、無対策の時に390~2100Bq/kgになる水田で対策が採られ、390Bq/kg以下に下がって出荷され、その対策は効率的である。 あんぽ柿では、加工せず出荷もしないという対策の費用を1200円/kgとして、そのような対策を採らせるに十分な放射性セシウム濃度は3600Bq/kgとなった。無対策の場合に340Bq/kg以上になる柿は除染して濃度を下げることが効率的となったが、無対策の場合に470Bq/kg以上になる柿は除染しても340Bq/kg以下に下がらないので、基準値を340Bq/kgにすることは、流通させた方が効率的なあんぽ柿を流通から排除する可能性がある。しかし、現実にはすべての樹園地で除染対策がすでに採られ、ほとんどのあんぽ柿の濃度が340Bq/kgを下回っているので、340~3600Bq/kgのどこに基準値を設定しても、効率性は損なわれない。
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Research Products
(4 results)