2014 Fiscal Year Research-status Report
「おいしい」食感の感性表現を破壊過程での食品属性の変化に翻訳するシステムの開発
Project/Area Number |
25350104
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中村 卓 明治大学, 農学部, 教授 (30328968)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食感 / 麺 / プリン / 食品構造 / 破壊 / 顕微鏡 / 粘弾性 / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「おいしい」食感の感性表現を客観的な機器による食品構造の破壊過程から食品属性に翻訳するシステムの開発を目的としている。咀嚼による食品の破壊過程で「かたさ・粗滑等」の変化が知覚され、それらを認知して食感のおいしさが表現される。本研究では、硬・柔のレベルではない、おいしい食感の感性表現を、知覚に対応した食品属性の破壊による変化に翻訳することを目指している。具体的には、咀嚼中の口腔内の使用部位(A:歯、B:舌)と時間経過について(イ)咀嚼知覚の意識化(官能評価)。咀嚼破壊の過程を機器による破壊で(ロ)単純モデル化。おいしい食感を力学物性と状態構造から(ハ)見える化する。 今年度は、A:歯のモデル;(1)昨年度確立した「もちもち」食感表現を構造と物性に翻訳するシステムについて、実際の食品に近いモデル系として冷解凍したゲルを用いて検証した。(2)乾燥条件の異なる試作パスタを用いて、一噛み目の「モッチリと/プリッと」食感表現を構造と物性に翻訳するシステムを検討した。これら食感は第1咀嚼をモデルにした力学特性とそれらの構造状態の解析結果から具体的に以下のように説明された。高温乾燥パスタの「プリッと」した食感は,咀嚼によりパスタが長さ方向に伸展して亀裂が素早く伝播することにより認知され,低温乾燥パスタの「モッチリと」した食感は,咀嚼によりパスタがパスタ直径方向と長さ方向の両方に伸展して亀裂が入らずに変形することで認知されると考えられた。 B:舌のモデル;食感表現を構造と物性に翻訳する評価システムを用いて、ゼラチンおよび寒天を添加した試作プリンにおける新食感を検討した。プリンにゼラチン、寒天を単独で添加するとそれぞれの特徴的な食感となるが、それらを単独でゲル化する最低濃度になるように混合するとお互いの特徴とは異なるやわらかくて壊れやすい新たな食感となることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感性表現と食品構造の相関を明らかにするために、口腔内における咀嚼使用部位(歯・舌)と咀嚼時間経過を(イ)「意識化」し、部位と時間に対応させた(ロ)「単純モデル化」した力学特性測定と構造状態の観察から、(ハ)「見える化」する咀嚼過程の解析システムの構築を目的としている。咀嚼過程を意識化した官能評価、破壊過程を数値化する機器分析、メカニズムを視覚化する構造観察を組み合わせた「見える化」された解析手法を検討した。具体的には、モデルゲルとゲル状食品を対象とし、咀嚼の使用部位の違いA:歯(切歯・臼歯)、B:舌/口蓋に分けて研究を進めている。本年度はA:歯=麺類(試作パスタ)・冷解凍モデルゲル、B:舌=試作プリンで検討した。その成果の一部を、8月の日本食品科学工学会第61回大会と3月の日本農芸化学会2015年大会にて以下のように発表した。
2014年8月28-30日 第61回日本食品科学工学会大会、ゼラチン・寒天混合によるプリンの食感変化の解析、○稲員知尋1,佐藤友香梨1,上川理絵2,井上慶太2,中村卓1(1 明治大農・農化,2 明治大院農・農化) 2015年3月26-29日 2015年日本農芸化学会本大会、冷解凍ゲルの「もちもち」食感へのタピオカ加工澱粉の効果 、○井之上 明弘、中村 卓 (明治大院農)
以上のように、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、(イ)咀嚼過程の官能評価、(ロ)破壊の物性計測と構造観察、(ハ)メカニズムを踏まえた統計解析の3つの手法からなり、レオロジー・摩擦学・形態学と認知心理学を基盤としている。対象食品は第1咀嚼の使用部位の違い(a);歯(切歯・臼歯)、(b);舌/口蓋に分けて研究をすすめている。破壊方法と破壊メカニズムの解析には、ゲルを対象とする。モデル系として、種類によって食感の異なる硬い澱粉ゲル「(a);歯」、タンパク質と多糖類の相分離構造が異なり食感に差が見られる柔らかい共存ゲル「(b);舌」を用いる。実際の食品として「(a);歯:麺類(パスタ・うどん)」・「(b);舌:プリン」を対象としてモデル系で得られた破壊パラメーターを具体的に検証する。
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Remarks |
食品工学研究室では、食品の「おいしさ」すなわち「食感」と「風味」を「食品構造」から追究しています。特に、構造の形成/破壊の制御により、おいしさをデザインする『食品構造工学』の確立を目指しています。
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Research Products
(6 results)