2013 Fiscal Year Research-status Report
亜熱帯地域の身近な自然環境を題材とした理科教員のための自然学習プログラムの開発
Project/Area Number |
25350259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
杉尾 幸司 琉球大学, 教育学部, 教授 (20433089)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 科学教員養成 / 理科教育 / 自然学習 / 教師教育 / 沖縄県 |
Research Abstract |
亜熱帯地域の身近な自然環境を題材とした理科教員のための学習プログラムを開発するために、好適なフィールドと対象生物を選定するための調査研究を行った。今年度は、身近な海辺を対象に実施し、教材化に必要な基礎情報の集積を図った。具体的には、潮間帯上縁部の満潮でも水没しない地点に生息する「海水を嫌う海産巻貝」であるコンペイトウガイEchininus cumingii spinulosusを対象に調査を行った。本種は、水につからない場所に生息しているので、観察が容易であり、児童・生徒向けの教材として有望である。 生息地内の岩礁において垂直分布を調査したところ、大潮時満潮位の位置よりも、1.5mから3.5m高い位置に生息していることが明らかになった。その分布は、2mから3mの範囲に集中しており、満潮時でもまったく冠水しない地点に生息していることは明かである。 また、潮汐に伴う生息場所の移動行動についても明らかにするため、91個体にマーキングを行い5月から11月にかけて32回の観察(大潮時と小潮時、12時間または24時間観察)を行った(延べ観察個体数246個体)。その結果、1日の中で活動している個体の割合が最も大きい月は11月で、 最も活動の小さい月は6月であったが、最も活発に活動している個体でも1日の最大移動距離は65.3cmで、移動が観察された個体(n=27)の平均移動距離は、12.9cmであった。また、その他の大部分の個体(n=219)は移動行動が見られず、本種は生息場所からほとんど移動しないことが示唆された。また、大潮時と小潮時を比較してもその活動の傾向に変化はなく、潮汐に対応して行動パターンを変えるような傾向は見られなかった。このように、本種は年間を通して限定された生息環境に存在するため、生息する海岸での発見が容易で、学校教育における野外観察等の教材として適していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習プログラムに必要な基礎研究として、身近な海辺と森林を対象に教材として有望な動物を選定し調査を行う計画であるが、初年度は、身近な海辺環境である潮間帯に生息するコンペイトウガイの沖縄島内での観察適地の選定や観察地での水平・垂直分布の状況、行動パターンに対する潮汐の影響等について調査を進めることができ、研究における重要な基盤情報が順調に蓄積されている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、身近な森林に生息する動物として土壌動物を対象に調査を行う。初めに、沖縄本島中南部の自然林について土壌動物の分布調査を行い、観察に適した場所を選定する。その後、選定された調査場所で土壌動物相等についての調査を進め、教材化に向けての基礎的な情報を蓄積する。
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