2014 Fiscal Year Research-status Report
亜熱帯地域の身近な自然環境を題材とした理科教員のための自然学習プログラムの開発
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25350259
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
杉尾 幸司 琉球大学, 教育学部, 教授 (20433089)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 理科教育 / 自然学習 / 教師教育 / 沖縄県 / 教員養成 / 亜熱帯地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜熱帯地域の身近な自然環境を題材とした理科教員のための学習プログラムを開発するために,好適なフィールドと対象生物を選定するための調査研究を行った。今年度は,「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」の教材化に向けた調査を実施した。調査は教材等への活用を想定し,校外における実習等に適した都市公園である,沖縄県那覇市首里の北西部に位置する末吉公園を調査場所とし,人為的影響に差がある森林・人工林・草地の三地点を選定し,調査地点とした。各調査地点にそれぞれ三つ50×50cmの枠を設置し,ハンドソーティング法およびツルグレン法を併用して土壌動物の調査を3月,6月,9月,12月に行い,記録結果から各地点の自然の豊かさ指数等を求めた。調査の結果,全ての月において,自然の豊かさ評価の平均点の値は,草地<人工林<森林となり,植生調査による結果と同様の結果を得られ,「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」は,亜熱帯域である沖縄県でも年間を通して活用可能であることが示唆された。 しかしながら,本調査の結果と,青木(2005)が示した評価得点の目安を比較すると,全体的に点数が低くなる傾向が得られた。このような傾向となった一因に,確認されなかった動物群や,逆に対象動物群ではないが頻繁に確認された動物群などの存在があると思われる。そのため,沖縄県のような亜熱帯域で,「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」を行う場合には,調査地域の環境をより正確に反映させる事ができる対象動物群の選定を改めて行う必要があるだろう。 本調査結果から,亜熱帯地域に属する沖縄県において教材として活用するためには,対象動物群の組み換え等,改善の余地が残されていることが示唆された。今後も継続的に調査を行い,対象動物群の検討のための情報の蓄積が必要であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習プログラムに必要な基礎研究として,身近な海辺と森林を対象に教材として有望な動物を選定し調査を行う計画であるが,初年度は、身近な海辺環境である潮間帯に生息するコンペイトウガイの沖縄島内での観察適地の選定や観察地での水平・垂直分布の状況,行動パターンに対する潮汐の影響等について調査を進めることができた。 今年度は,身近な森林に生息する動物として土壌動物を対象に調査を行い,「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」が,沖縄県の自然環境でも活用可能であるか検証を行った。調査の結果,全ての月において,自然の豊かさ評価の平均点の値は,草地<人工林<森林となり,植生調査による結果と同様の結果を得られ,「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」は,亜熱帯域である沖縄県でも年間を通して活用可能であることが示唆された。 これまでの研究によって,身近な海辺と森林を対象に教材として有望な動物についての研究が進み,教材として活用するために必要な基盤情報(観察に適した生息場所,教材化に必要な生態・行動に関する知見等)が順調に蓄積されている。
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Strategy for Future Research Activity |
身近な森林に生息する動物として土壌動物を対象に調査を行った結果。「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」は,亜熱帯域である沖縄県でも年間を通して活用可能であることが示唆されたため,この結果をもとに身近な自然を学習するプログラムのひとつとして,「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」を活用可能であることが明らかになった。 しかしながら,もともと暖温帯での実施を想定としたこの評価方法は,沖縄県のような亜熱帯域での活用には注意が必要なことも明らかになった。そのため,今後も調査を継続し,確認されなかった動物群や,逆に対象動物群ではないが頻繁に確認された動物群などについての情報を集積・整理し,亜熱帯域である沖縄県でも活用可能な教材とするための検討を進める。 また、身近な海辺の生物を教材化するために,初年度実施した岩礁海岸だけではなく,砂浜海岸での活用が可能な生物についての検討を進め、教材化に向けての調査を継続していく。
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Causes of Carryover |
購入予定物品が、予定金額よりやや安価に購入できたため、予算に若干の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は少額であるため、次年度物品費に繰り入れて使用する。
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