2014 Fiscal Year Research-status Report
“東側”の原子力―旧ソ連邦・東欧諸国における原子力“平和利用”の展開に関する研究
Project/Area Number |
25350381
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
市川 浩 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00212994)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 原子力 / 平和利用 / 冷戦 / 科学者 / 技術移転 / 旧ソ連邦 / 旧"東側"諸国 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年9月,2015年3月,モスクワにおいて資料調査を実施した。9月の出張では,昨年度以来ひとつの重点となっていた,1950年代後半のソ連邦における放射線の生体への影響研究の進展に関する資料調査に従事するとともに,再び,旧”東側諸国”共同の原子力研究機関であった「合同原子核研究所」を訪れ,古参のユーリー・オガネシヤン博士に同研究所における各国研究者との初期の協同についてインタビューを実施した。また,世界初の原子力発電所であったオブニンスク原発を訪ね,創業当時から研究に携わってきたレフ・コチェトコフ博士に同発電所最初期の様子についてインタビューを実施した。3月の出張では,科学アカデミー文書館を中心に,おもに1950年代後半における原子力分野でのソヴィエト科学者と外国の科学者との交流・接触について資料調査を実施した。 研究成果の発表では,10月にロシア連邦のカザン市で開催されたThird International Conference on the History of Computers and Informatics in the Soviet Union and Russian Federation: History and Prospect(SoRuCom2014)に招かれ,総会会場で旧ソ連のコンピュータ開発初期における核物理学者の役割について講演したほか,5月の日本科学史学会第61回年会,12月の同学会第18回西日本研究大会において研究成果をそれぞれ口頭で発表した。また,1950年代後半のソ連邦における放射線の生体への影響研究の進展に関して論稿をまとめ,日本科学史学会の欧文誌に投稿した。当該論文は本年7月に公刊の見込みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料調査では,興味深い資料を次々と発見し,研究成果も順調に発表できているが,2014年度はソ連から東欧諸国,中国への原子核物理学研究普及の中核となった「合同原子核研究所」再訪をはたしたものの,諸般の事情(母の健康悪化など個人的事情が大きい)により,当初計画していたドイツ(旧東独)などでの資料調査は実現できず,最終年度の課題となった。その最終年度においても,チェコスロヴァキアに関する現地調査は難しい見通しであり,この点で計画遂行がやや遅れ気味である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き現地での資料調査を重視する。今年度は9月にドレスデン近郊のHelmholtz-Zentrum,Dresden-Rossendolf(もと東独の中央原子核研究所)を訪問し,古参研究員Wolfgang Mats博士らにインタビューし,資料調査を実施する。必要に応じて通訳をお願いする予定である。また,5月には,モスクワの科学アカデミー文書館,ロシア国立図書館,ロシア国立公共科学技術図書館などで原子力技術のソ連邦から同盟諸国への伝播に関する資料調査を実施する。また,国内でも収集可能な資料は着実に収集する。 最終年度であることに鑑み,収集した研究情報の整理,まとめ,研究成果の発表に力を尽くしたい,と考えている。 研究成果の発表では,8月に開催される第9回国際中東欧研究連合・2015年世界大会(ICCEES2015)において研究仲間とセッションを組み,研究発表を行うことが決まっている。このセッションのためにカナダよりAlexei Kojevnikov博士を招くことを計画している。また,原子力"平和利用"理念の普及に果たしたソ連の科学者の動向に関する研究成果を日本科学史学会の欧文誌,_Historia Scientiarum_に論文を投稿する計画である。
|