2013 Fiscal Year Research-status Report
大雪山における下限付近の永久凍土の状態把握と監視体制の構築
Project/Area Number |
25350417
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
曽根 敏雄 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (10222077)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 永久凍土 / 地温観測 / 温暖化 / 大雪山 |
Research Abstract |
永久凍土の発達には、地表面温度が低いことが必要であり、このため気温と積雪深が永久凍土の重要な発達要因である。下限付近において永久凍土の存在の可能性を探るため、地表付近の地温観測と地表面温度の観測を行なった。この観測は、標高1900mから1670mの永久凍土の発達の可能性が高いと考えられる稜線部の風衝地(積雪の少ない場所)を対象にした。2013年は積雪状況が例年とは異なっており、5-6月にも風衝地の南側で積雪が見られた。このためか南側で地温が高かった場所も存在した。通年観測を目指した地表面温度の観測は、小型のデータロガーを多数配置し、9月から10月に観測を開始した。またこれまで手薄であった標高の低い場所(標高1650m付近)での気温観測を開始した。 凍土の存在を推定するために、約1900m以下の標高の異なる風衝砂礫地において電気探査を行った。地表から電気比抵抗が低高低の順になっている層があり、標高の高い地点ほど第2層の高比抵抗層の厚さが厚いという結果が得られた。この高比抵抗層を凍土層と考えると、順当な結果となった。 今回計画中のボーリングでは、孔の径が小さく、1深度の測定に1本のセンサーケーブルを用いた場合には、測定できる深度が限られてしまう。このため限られた数本のケーブルで多深度の地温測定を行なえる装置を開発した。この装置は、永久凍土上部の年凍結融解層(活動層)の変化をみる場合等、1~数cmおきの測定に適している。現在、野外2個所に置いて試験観測を行なっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
永久凍土の変化を調べる上で、地温観測を行なうために適した場所を選定するため、標高の異なる7風衝砂礫地において地表面温度の測定を行なっている。この地表面温度観測は予定通りである。 次に小口径のボーリング孔においても、精度の高い地温観測を深度の異なる多点で行なうための測定装置の開発を行なった。分解能の点でさらに向上したいが、少なくとも最低限の目標は達成できた。 また地温以外の情報から永久凍土の存在を把握できるようにするため電気探査を風衝地で行なった。まだ地温のデータとの比較は出来ないが、興味深い結果が得られており、物理探査は当初の予定に先行するものである。 2013年度の当初の予定では、1880m地点でボーリングを行なう予定であったが、日程と天候等の問題で凍土を貫くボーリングは行なえなかった。この点に於いて、やや遅れ気味である。しかし、ボーリングに関して考えうる技術的な問題に対して検討を行なっている。すなわち小型軽量のボーリング装置や、適切な大きさのビットの使用の検討とテストを行なった。ここでは口径の異なる4種類のビットセットを準備し、新たな凍土用のビットを作製している。
|
Strategy for Future Research Activity |
6月中旬までに気温・地表地温データを回収する。この計測は継続する。気温・地表地温データの解析結果および電気探査の解析結果をもとにボーリング実施地点を検討する。標高の異なる複数地点(1680m,1715m,1750m,1830m付近)でボーリングを行う予定であるが、表層地温の解析により優先順位を決める。このうち最低でも2個所において、ボーリングを行なう。ボーリングの実施は、気象が安定しかつ地盤が凍結中の6月あるいは9-10月に実施する。ボーリングコアは、可能な限り凍結状態で運搬保存し、解析(含氷率・熱伝導率測定等)を行なう。ボーリング孔には地温計測装置を設置し、永久凍土の地温のモニタリングを開始する。また小型でより精度の高い地温測定機器の開発に努める。 ボーリングにより永久凍土の発達状態が確かめられた地点において物理探査(弾性波探査・電気探査など)を行ない、実測と比較検討する。これにより直接的な観測によらず間接的な方法で永久凍土の探査をする手法を確かめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ある物品の購入に際して、予想外に支払いが遅れ、年度内に支払いを完了できなかったために発生しました。当該物品は、本学調達課を通して発注がなされ、2月3日に納入されました。しかし、事務上の手続きが遅れ、翌年度支出となりました。 上述のように既に納入されている物品の支払いに用います。
|