2014 Fiscal Year Research-status Report
大雪山における下限付近の永久凍土の状態把握と監視体制の構築
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25350417
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
曽根 敏雄 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (10222077)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 永久凍土 / 温暖化 / 地温観測 / 風衝地 / 大雪山 |
Outline of Annual Research Achievements |
永久凍土の発達には地表面温度が低いことが必要であり、このため気温と積雪深が永久凍土の重要な発達要因である。永久凍土の下限高度付近における存在の可能性を探るため、地表付近の地温観測と地表面温度の観測を行ない、通年観測のデータが得られた。この観測は、大雪山の標高1900mから1670mの永久凍土の発達の可能性が高いと考えられる稜線部の風衝地(積雪の少ない場所)を対象とした。観測記録の解析の結果、標高1670mと標高1710m地点には、永久凍土の存在の可能性は低いこと、標高1760m以上の風衝地には永久凍土が存在する可能性が高いことが判明した。また気温観測をこれまでに手薄であった、標高1670mおよび1800m付近で開始した。さらに風衝砂礫地の1670m地点において秋にボーリングを行なった。しかしここでは凍土層の存在を確認することは出来なかった。 また大雪山には、泥炭質の永久凍土の丘であるパルサの分布地があるが、この分布地の南側のパルサがほとんど消滅した。ここでは2012-13年冬に多雪であったことが影響していると考えられた。 今回計画中のボーリングでは、孔の径が小さく、1深度の測定に1本のセンサーケーブルを用いた場合には、測定できる深度が限られてしまう。このため限られた数本のケーブルで多深度の地温測定を行なえる装置を開発したが、さらにこれを改良して長期の観測に耐えるものが出来た。その結果、乾電池で1年以上の計測が可能となった。また野外において試験観測を行なった結果、最大凍結深さを2cm以内の誤差で測定することが出来た。この装置は、永久凍土上部の年凍結融解層(活動層)の変化をみる場合等、1~数cmおきの測定に適している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
永久凍土の存在する下限高度を推定するために、平成25年度から風衝砂礫地の地表面温度測定を行っている。この測定データを春先に回収し、その結果の解析に基づいて、地点を選定してボーリングを行う予定であった。しかし国立公園(環境省)および特別天然記念物(文化庁)の調査の許可取得が、申請方法が変更されたこと等により、予定より遅れてしまった。このため、風衝砂礫地における永久凍土のボーリングと地温測定機器の設置が遅れている。気温観測の設置に関しては、計画通り実施できた。また多深度地温測定装置の開発も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果によって、大雪山の風衝地では、1740m付近には存在する可能性が高いと判明したことから、ここで最大20m程度の深度まで、永久凍土の基底を越えることを目標としたボーリングを行う。またこのボーリング孔を利用して地温観測を行う。このほか可能な限り多くの地点でボーリングを行い、地温観測を行う。またこれまでに設置した地点の地温データ、気温データの回収、および解析を行う。多深度地温測定装置については、さらにより使い易いように改良を加えたい。パルササイトでは、大雪山で唯一、永久凍土の基底より深い地温が測定されている。昨年は、この南部地点のパルサの衰退が大きかったことから、今年度中にはこのパルサが崩壊してしまう可能性がある。したがって、ここでは永久凍土の衰退過程が地温変化から捉えられる可能性がある。
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Research Products
(4 results)