2013 Fiscal Year Research-status Report
平準化を考慮した統合的生産計画・指示方式の開発とSCMにおける性能評価
Project/Area Number |
25350465
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
田村 隆善 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (70093101)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生産管理 / 生産・発注指示方式 / 生産計画 / 事前需要情報 / シミュレーション実験 / 経営工学 |
Research Abstract |
世界の標準的生産管理システムといえるMPRシステムは、事前需要情報が得られる場合に有効とされており、現実の世界でも、何らかの事前需要情報が得られることが多い。本研究では、2013年度において、事前需要情報を有効に利用できる平準化の手順を開発し、その有効性を数値実験によって検証することを目的として研究を進め、平準化生産指示のロジックを提案し、数値実験を行って、従来の生産指示方式と提案方式との性能比較を行った。また、それら生産指示方式に共通して利用できる簡便な最適化アルゴリズムを開発し、その妥当性についても検討した。 本研究ではまず、MRPベースの平準化指示方式と事前需要情報と出荷量を使った平準化指示方式の2方式を提案し、それらとMRP方式ならびにかんばん方式との間で性能比較を行った。数値実験の結果によると、(1) 事前需要情報が利用できるときでも、かんばん方式と比較してMRPの性能は高くない、(2) MRPベースの平準化は、かんばん方式より性能が高い、(3) 事前需要情報と出荷量を使った平準化指示方式は、MRP方式より総コストで35%~60%の費用低減効果のあることなどが確かめられた。これらの成果は、日本経営診断学会誌へ論文投稿を行い、掲載が決定している。 事前需要情報と出荷量を使った平準化指示方式を若干改善し、CONWIP方式と基点在庫方式を加えて性能比較を行った。数値実験の結果、提案方式での総費用は、(1) かんばん方式より31%~51%、(2) COPWIP方式より20%~35%、(3) 基点在庫方式より30%~43%の費用低減効果があるなど高い性能を示した。これらの成果の一部は国際会議IJIE2013(2013年10月)で発表し、また、日本経営工学会平成26年度春季大会(2014年5月)で発表することが確定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,本研究の根幹の一つをなす指数平滑法を使った平準化生産指示方式に関して、機械加工型多品種・多段階生産・在庫システムの最適化とその有効性に関して研究を行い、その成果の一部をまとめ、学会誌ならびに国際会議において発表した。日本機械学会論文誌(2013年2月)に掲載された論文「SCMにおける平準化生産・発注の最適化とその効果に関する研究」に対して、2014年3月に日本機械学会より生産システム部門学術業績賞が贈られた。 2013年度は、これらの成果をもとに、事前需要情報を考慮した平準化指示方式の開発とその性能評価を行うことを目標に研究を進めた。まず、事前需要情報が考慮されているMRP計算ロジックに平準化を取り入れた生産指示方式を単一品目・多段階システムに関して開発し、その性能をシミュレーション実験によって評価した。実験結果によると、かんばん方式より高い性能は得られたが、期待した性能は達成できなかったため、事前需要情報と出荷量をもとに平準化指示量を決定する簡便な指示方策を開発し、数値実験によってかんばん方式、MRP方式、CONWIP方式、基点在庫方式と性能比較を行った。結果として、提案した平準化指示方式が高い性能をもつことを確認した。また、この実験では、事前需要情報の効果についても、定量的知見が得られた。 現在は、多品目・多段階システムの実験を行っている段階である。この研究の成果は2014年6月中旬(論文の締め切り)までにまとめ、国際会議APIEMS2014(2014年10月)に発表する予定で論文の執筆を平行して進めており、概ね研究計画に沿って研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の前半は、これまでの成果を内外の論文誌に投稿するため、追加実験とともに、論文執筆を行いたいと考えている。2014年後半以降の研究課題として、以下の2つの研究課題に取り組みたいと考えている。 1.組立メーカーと部品サプライヤーからなる多段階のSCM(supply chain management)モデルを構築し、平準化生産・資材発注指示方式の性能評価を行う。この課題の取り組みに必要な要素技術はすでにこれまでの研究成果が利用できるので、SCMのシミュレーションモデルの構築を除いて難しくないと考えている。 2.季節変動がある需要モデルのもとでの平準化指示方式を開発し、その性能をMRP方式やかんばん方式などと比較する。需要予測の周期は通常,1ヶ月程度であるのに対し,かんばん方式などによる資材発注や生産指示の周期は1日程度とかなり短期間である.このため,生産計画立案ロジックと生産指示方式を統合的に開発する必要がある.まずは、単一品目・多段階システムについて取り組む計画である。
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