2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350509
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
中城 智之 福井工業大学, 工学部, 教授 (00367509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇治橋 康行 福井工業大学, 工学部, 教授 (60092764)
青山 隆司 福井工業大学, 工学部, 教授 (60350807)
加藤 芳信 福井工業大学, 工学部, 教授 (70148188)
橋口 浩之 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (90293943)
山本 真之 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (90346073)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気境界層 / 下部対流圏 / 豪雨予測 / 防災 / 局地風 / ウィンドプロファイラ / 気象レーダー / アメダス |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度の成果を発展させる形で,福井平野の降水における地形の影響を調査するため,降水の特徴と対流圏下層の風の関係を調査した。 降水データとして気象庁C帯気象レーダーの高度2kmにおけるエコー強度データを用いた。対流圏下層の風のデータとしては,気象庁アメダスの地上風データ,気象庁WINDAS福井局および福井工業大学のウィンドプロファイラレーダーの高度400mのデータを用いた。データ解析期間は2013年4月から10月までの7か月間である。地形の効果を検証しやすくするため,前線の直接の影響が強い日は対象から除外した。 解析の結果,対流圏下層の風向によって,降水の空間分布および地方時依存性に次のような明確な特徴が表れることが明らかとなった。 (1)下層風向が南寄りの時:夜間から朝方にかけて発生頻度の高い風向である。このとき,平野北部沿岸域および南東部の山岳域で強い降雨が発生する頻度が高く,平野部では頻度が小さい,(2)下層風向が北寄りの時:夕方から夜間にかけての発生頻度の高い風向である。このとき,平野北部および北部沿岸海域で発生頻度が高く,南に行くに連れて頻度が減少する。特に,平野北部の西側と東側の山岳域で発生頻度が高い。(3)下層風向が西寄りの時:朝方から昼間にかけての発生頻度の高い風向である。このとき,平野東部および南東部の山岳域で発生頻度が高く,最も降雨が強くなる傾向にある。 (1)は陸風の影響であり,平野部では下層風が発散傾向となる。(2)では下層風が平野北部で収束傾向にあり,下層風の発散・収束が降水の空間分布に影響していると考えられる。(3)については西寄りの風が平野東部および南東部の山岳域で強制上昇することが強い降雨の原因と考えられる。これらの下層風の特徴は,地上風よりも高度400mで顕著であり,降水予測において高度数100mの風の観測が重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.不十分な点 (1)ウィンドプロファイラレーダーを用いたレンジイメージング観測について:大気状態の詳細な観測のために福井工業大学のウィンドプロファイラレーダーを用いて行う予定であったレンジイメージング観測について,福井工業大学ウィンドプロファイラレーダー観測仕様を大幅に変更する必要があることが判明した。その対応ができておらず,レンジイメージング観測を実施できていない。 (2)各種観測機器を用いた総合観測が実施できていない:10mパラボラアンテナの故障により,当初予定の超小型衛星の活用ができていない。また,ソーダーの故障により,当初予定のウィンドプロファイラレーダーとの共同による大気境界層の総合観測が実施できていない。また,雷観測システムの稼働が遅れている。 (3)成果の公表について:データ解析の再検討に時間を要し,得られた成果のまとめが遅れている。現在,投稿準備中である。 2.得られた成果 気象庁のC帯気象レーダー,WINDAS福井局のウィンドプロファイラレーダーおよびアメダスのデータと,福井工業大学のウィンドプロファイラレーダーのデータを比較することにより,福井平野における局地的な風の特徴と,降水粒子発生の関係を明らかにすることができた。具体的には,対流圏下層の風と地形の相互作用によって福井平野の降水分布が受ける影響について,従来よりもその実態を詳細に解明することができた。25年度は特定の豪雨現象についての解析であったが,26年度は局地風の日変動と地形の相互作用が降水に及ぼす影響として,局地風の普遍的な影響を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ウィンドプロファイラレーダーを用いたレンジイメージング観測について レンジイメージング観測の実施に向けて,観測仕様の大幅変更を行うためのソフトウェア製作を行いたい。 (2)各種観測機器を用いた総合観測が実施できていない事について 10mパラボラアンテナとソーダーの修繕費用がそれぞれ約2億円,1千万円との見積もりになっており,27年度に修繕可能な見込みが立っていない。そこで,26年度に得られた成果に従って,総合観測についての方針を変更し,気象庁のC帯気象レーダー,WINDAS福井局のウィンドプロファイラレーダーおよびアメダスのデータ,メソ客観解析データ等の他の観測データと,福井工業大学のウィンドプロファイラレーダーのデータを用いた総合的なデータ比較の実施を行うこととする。 26年度のデータ解析によって,対流圏下層の風が福井平野の降水に与える影響の実態がより詳細に明らかにされた。27年度は,さらに解析データを増やすことによって結果の統計的信頼性を増すと同時に,26年度には使用しなかった新しいデータ(メソ客観解析データ)の導入により,対流圏下層の風以外の条件についても考慮することで,福井平野において強い降雨が発生する条件の絞り込みを行う。これによって,診断的な降雨予測技術の向上に役立つ情報が得られると期待される。
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Causes of Carryover |
(1)査読付き論文への投稿料:12万円を予定していたが,データ解析結果の検討の結果,解析手法の再検討が必要となり投稿に至らなかった。(2)データ保存用ハードディスクドライブの購入費用減:雷観測システムの稼働の遅れにより約5万円,衛星データおよび地上気象データ保存用に低価格品を購入したことにより約3万円,(3)京都大学の共同研究者の旅費使用が予定額8万円のところ6万円になった。(4)衛星画像データ購入費用として合計24万円を予定していたが,データ解析用パソコン購入の必要が生じたため,そちらに振り分けた結果として,約5万円の未使用が発生。(5)予定していた国内旅費およびウィンドプロファイラレーダー用ハードディスクドライブの購入費用使用を行わなかったため,約8万円の未使用が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)査読付き論文への投稿料:12万円,(2)メソ客観解析データ購入費用:20万円,(3)雷観測データ保存用ハードディスクドライブの購入費用:6万円 の計38万円。
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Research Products
(10 results)