2014 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児CT検査における年齢別被ばく評価と検査の最適化に関する研究
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25350526
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川浦 稚代 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60324422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184437)
今井 國治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20335053)
藤井 啓輔 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40469937)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線計測学 / CT / 人体ファントム / 乳幼児被ばく / 医療被ばく |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、X線CTによる医療被ばくの将来リスクが国内外で大きな問題になっているが、そのリスク評価に必要な基盤データとなる個々の「臓器線量」を正確に評価することは困難である。本研究では、成長とともに体型が大きく異なるため、被ばくの実態が把握しにくい乳幼児のCT被ばくに着目し、体型に応じた線量評価をより正確に行うために、日本人乳幼児の人体構造を精密に模した人体ファントム臓器線量計測システムを開発し、それを用いて、我が国の乳幼児CT被ばくの実態を解明することを目的としている。 平成26年度は、前年度に作製した3歳児人体ファントムの線量評価における妥当性を検証するために、ファントムの主要な臓器位置(152箇所)に、市販の蛍光ガラス線量計を設置した3歳児ファントム臓器線量計測システムを作製した。この臓器線量計測システムによる計測値と、放射線医学総合研究所がWeb上で公開している「CT撮影による被ばく線量を評価するWEBシステム:A web-based CT dose calculator (WAZA-ARI v1)」との線量比較を行った。WAZA-ARI v1では、小児の標準ファントムとして4歳児の数学ファントムによる線量シミュレーションが可能であるため、本研究で作製した3歳児ファントムと体型が近いことから、開発した3歳児ファントムにおける臓器線量の妥当性の検証に有用であると考えた。線量比較の結果、両ファントムの体型に多少の違いがあるものの、頭部、胸部、腹部CT検査条件において、シミュレーションと実測では、スキャン範囲内の臓器の線量差がおおよそ20%以内であることがわかった。このことから、我々の開発した人体ファントムは、年齢相応の被ばく評価が可能であると判断できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、前年度に作製した3歳児人体ファントム内部に設置した微小線量計による線量値が、年齢あるいは体型相応の評価値を示すかどうかを検証することを第一の研究目標として研究を進めた。3歳児人体ファントム内部に市販の蛍光ガラス線量計を多数設置して、臓器線量を算出したところ、どの撮影条件においても、同年代であるボクセルファントムによるシミュレーション結果とほぼ同等の値を示すことが分かった。 ゆえに、当初の研究計画通り、本研究で開発した物理的人体ファントムは、年齢相応の被ばく評価に十分使用可能であることが検証できた。 従来、ファントムにおける線量評価では、今回使用したように市販の蛍光ガラス線量計を用いることが多いが、操作が煩雑で、撮影から臓器線量を取得するまでに数日を要するという欠点がある。そこで本研究では、リアルタイムで臓器線量および実効線量評価が可能な臓器線量計測システムの作製も行った。このシステムを、作製した人体ファントムに設置することで、より簡便に短時間で線量データの収集が可能になるものと期待された。よって、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したリアルタイム臓器線量計測システム(Si-pinフォトダイオード線量計測システム)を標準電離箱を用いて校正し、3歳児人体ファントム内部の主要臓器位置に設置し、3歳児ファントム臓器線量計測システムを新たに構築する。頭部、胸部、腹部CT撮影条件で3歳児ファントムを撮影し、その時の臓器線量を蛍光ガラス線量計で測定した臓器線量と比較することで、自作のSi-pinフォトダイオード線量計測システムの妥当性を検証する。両者の線量計測システム間で大きな違いが出た場合は、Si-pinフォトダイオード線量計のファントム内部での設置位置を再検討する。 各病院に、3歳児ファントム臓器線量計測システムを持ち込み、頭部、胸部、腹部領域のルーチン撮影条件でファントムを撮影してもらい、3歳児のCT被ばくにおける臓器線量と実効線量を収集する。得られた線量が、国内外の同年代における標準的な被ばく線量、あるいは、診断参考レベルと同程度であるかを確認する。各撮影条件におけるファントム画像の画質と線量の関係を調べ、被ばく低減の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
蛍光ガラス線量計の測定実験のために旅費として使用予定であったが、予定よりも早く研究成果が得られたため、一部研究費に未使用分が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、全国の病院へ3歳児ファントム臓器線量計測システムを持参し線量評価を行う計画であるため、次年度使用額は旅費として使用する予定である。
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Research Products
(21 results)