2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350549
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森本 展行 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00313263)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己組織化 / ナノ粒子 / ベタイン / 温熱化学療法 |
Research Abstract |
ポリエチレングリコールとポリ(3-ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホン酸)によるブロックポリマー(PEG-b-SB)を、PEG分子量が1,000-5,000、またSB分子量が10,000-50,000の範囲で調製した。これらのポリマーは、純水中においてマイクロメートルサイズの中空粒子を形成し得るが、構造安定化あるいはサイズ制御を試みると、多層膜型のミクロスフィアとなることが明らかとなった。これらのミクロスフィア溶液の塩化ナトリウム濃度を増加させていくと、SBポリマーに由来する上限臨界共溶温度(UCST)が低下した。どの組成のPEG-b-SBでも100 mM以上の条件では、室温でミクロスフィアは溶解した。 そこで、より塩溶液中で安定なベタイン含有ナノ粒子の調製を目指し、側鎖間のスタッキングによる構造安定化を期待して、ピリジニウム型スルホベタイン(PySB)の利用を考え、PEG-b-PySBを調製した。得られたPEG-b-PySBは、いずれも純水中には溶解しなかったため、10倍濃度のリン酸緩衝液(PBS)中にて溶解し、生理塩濃度まで希釈することでサイズの揃った粒子が得られることが確認された。またPEGの分子量が増加するにつれてその粒径は減少し、PEG分子量が5,000のポリマーでは100 nm程度の流体力学径が得られた。このときPBS中では4日後もほとんど粒径に変化が認められず、安定なナノ粒子の調製に成功した。一方でリン酸緩衝液中の塩化ナトリウム濃度を増加させても、室温においてはいずれも約500 mMまで溶解せずに粒子状態を保持しえた。これらの結果は、双極子-双極子相互作用を会合因子として生理条件下で有効に利用し得ることを示す重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PEG-b-SBが中空よりも中実構造の方が安定であることは想定外であったものの、ここまでは概ね順調に研究実施計画にのっとり展開できている。申請時に危惧していたPEG-b-SBの塩存在下での溶液安定性の問題を具体的な数値で明らかとした上で、その安定性を向上させうると期待されるピリジニウム基を有したPySBとPEGから含有新たなポリマーを設計・調製した。その結果、PEG-b-PySBは、PEG-b-SBと同様スルホベタイン側鎖により生じる双極子-双極子相互作用からナノ粒子が自己組織的に形成できた。このポリマーは、PEGブロック長を制御することで粒子サイズが調整でき、分子量5,000のPEGでは約100 nmとなること、また生理塩濃度条件下においても安定であることを明らかとした。しかしこの条件下では、粒子が安定すぎるため、温度応答性は発現しない。この点においてPySBの分子量や構造などの詳細条件の検討が必要である。 これに加えて、平成26年度以降の推進を円滑に行うため、細胞培養とアッセイの技術導入を行い、PEG-b-SB、PEG-SBランダムコポリマーに対して検討した。この結果、非常に低毒性であることを確認した。さらに、ポリマー末端基を蛍光修飾し、PEG-SBランダムコポリマーがある特定の分子量・組成条件の時にのみ非常に高い細胞内導入能を示すとの知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは当初の実施計画通り、キャリアの細胞毒性評価を行うとともに、薬物の内包と放出特性の解析を試みる。薬物としてドキソルビシンに加えてオリゴ核酸についても検討したい。一方、ここでのキャリアとして、PEG-b-PySBは細胞毒性の発現も懸念されることから、細胞毒性の低減と温度応答性の発現を目指したポリマーの設計も並行して行っていく。またこれらに加え、ほとんど低毒性であることが確認されているPEG-SBランダムコポリマーミセル、および高塩濃度条件でミセル転移する高分子量SBブロック(20,000以上)を有したPEG-b-SBミセルの利用も視野に入れていく。 一方でキャリアにガン細胞標的指向性を示す葉酸の修飾を行う。こちらも手法としては当初計画通りに葉酸のカルボキシル基末端をポリマー末端に修飾する。この末端修飾の効果を見極めていきたい。また組成を制御したPEGとSBのランダムコポリマーミセルは、それ自体でガン細胞への高い取り込み能を示している。この細胞内取り込みは、エンドサイトーシスではなく従来にない機構を有していると示唆されていることから、より詳細な細胞内取り込み機構の解明を目指したい。 順調に結果が得られるようであれば、誘電加温システム評価系の構築を積極的に行っていきたい。
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