2014 Fiscal Year Research-status Report
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25350598
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三木 明徳 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (20144561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 啓司 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (30144562)
荒川 高光 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (90437442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 萎縮 / 物理療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋損傷に対し疼痛や腫脹を軽減する目的で患部を冷やす処置が広く行われている。しかし、われわれは以前、挫滅損傷を与えた骨格筋に対して寒冷刺激を与えると再生が遅延するという知見を得た。それは骨格筋損傷の急性期に起こる二次的な変性が、寒冷によって遅延したためと思われた。よって、われわれは、再生を速める方法として温熱刺激を与えることにした。温熱刺激を与えることにより、各種筋再生のマーカーがより早く発現することがわかり、それはIL-6などの炎症性のサイトカインの発現上昇とも関連することが示唆された。 また、神経の切断による筋萎縮と非荷重によって起こる筋萎縮はメカニズムが異なると言われているため、蛋白質分解酵素の発現量を生化学的に調べた。また両系における筋萎縮予防に対して電気刺激の効果を比較した。非荷重よりも除神経の方が筋の萎縮は高度で,蛋白質分解酵素も多く発現していた。電気刺激は除神経モデルではある程度の萎縮予防効果が見られたが,非荷重系では認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)骨格筋損傷直後に与えた温熱刺激の影響を形態学的に解析した論文は時利された。これに続いて、骨格筋損傷直後の温熱刺激の影響をmyogenin、MyoD、IL-6の免疫染色に加えて生化学的に半定量化して経時的変化を調べ,骨格筋の再生過程に起こる様々な現象と経時的に対応させて,それぞれの生物学的役割を明らかにしようと試みた。本研究に関しても論文を作成し投稿したが,リバイスの要請があり,追加実験を含めて現在修正中である。 2)骨格筋が損傷されると,多くの場合その筋を支配する末梢神経も損傷される。例え温熱刺激が筋の再生を促進しても,末梢神経の再生を阻害したのでは意味がない。そこで神経再生に対する温熱や寒冷刺激の影響を純形態学的に観察したところ,筋再生と同様に,末梢神経の再生も温熱刺激によって促進される可能性が示唆された。 3)末梢神経再生に関する研究の過程で,ラットやマウスの坐骨神経を両側性に切断すると踵部に人の褥瘡によく似た皮膚病変が現れることに気付いた。これは臨床的に非常に重要な意味があると判断し,その後動物の姿勢保持や荷重法を改良し,ほぼ前例に褥瘡様変化を惹起させることができるようになった。これまでのところ適切な動物の褥瘡実験モデルがないことから,肉眼観察に加えて組織学的,免疫組織化学的に観察したところ,組織レベルでも発症の過程がヒトの褥瘡と非常によく似ていることが分かった。これまでの実験で必要な所見が揃ったので,現在は論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)骨格筋が損傷された直後に温熱刺激を与えることは一般的に禁忌とされ,患部を冷やすことが推奨されている。しかし,われわれのこれまでの研究結果は,温熱刺激が筋の再生を促進し,寒冷刺激は再生を遅延させる可能性を示唆している。しかし,動物実験で得られた所見をそのままヒトの臨床に適用することは慎重でなければならない。臨床的な観点から、臨床の理学療法現場でどの実態を調査し,どのようなプロトコールであれば臨床応用が可能なのかを調べていきたい。 2)末梢神経の再生過程では損傷軸索の変性,炎症反応,マクロファージの遊走、シュワン細胞の増殖などが順次起こる。これらの現象は骨格筋損傷後の再生過程とも共通点が多く見られる。そこで,坐骨神経を切断し,近位断端付近に起こるこれらの現象を抗ED1,抗S100蛋白,抗ニューロフィラメント抗体を用いて免疫組織化学的に観察し,温熱刺激や寒冷刺激が末梢神経の再生に及ぼす影響を観察する。そして,そのメカニズムも明らかにしたいと考えている。 3)これまでの褥瘡に関する実験から,我々が開発した方法が褥瘡の動物実験モデルとして利用できる可能性があることが分かった。今後はこの方法を用いて褥瘡を作成し,減圧処置や種々の物理刺激を適用して,褥瘡の治癒過程を観察し,それらの治療効果を調べて行たいと考えている。
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Causes of Carryover |
実験計画にあった動物数をそのまま発注したが、差額が生じ、最終的に次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大きな余剰金ではないため、今年度の計画そのままで使用可能である。
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Research Products
(2 results)