2016 Fiscal Year Research-status Report
地域スポーツガバナンスの新構築による震災復興への寄与に関する研究
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25350754
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
中村 祐司 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (50237442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スポーツ震災復興 / 復興五輪 / スポーツと防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
とくに復興五輪と五輪レガシーとの連結面に注目し、五輪をめぐる社会科学研究上の意義も含めた文献研究に従事した。すなわち、グローバル世界における五輪をめぐる知見について、招致活動、市場論理、スポーツ組織の画一化、市場・地区開発、芸術・文化・ボランティアといった課題状況の枠組みから考察した。 次に五輪レガシーをめぐり、都市再生・住居、ソフトレガシーの側面からの知見を抽出した。たとえば「五輪招致運動当時は社会的包摂や社会民主的な観点が強調されたのだが、その政策の力点が強烈な市場個人主義へとシフトした」といった知見がそれである。 国内の動きとして、都知事選後の復興五輪をめぐる知事の捉え方の変容に注目した。すなわち、東京都の調査チームが、「東日本大震災からの復興五輪と位置付けてきたにもかかわらず、東北では宮城県のサッカー予選しか予定されていない」として、宮城県登米市の「長沼ボート場」を挙げた事例を対象に、復興五輪をめぐる招致時のPRと開催決定後の内実との温度差に注目した。 震災復興や五輪関連施設の建設をめぐる人材や資材の不足とそれに伴うコストの増加などがますます顕在化するようになった。東京五輪会場の配置見直しや、政府、大会組織委員会、東京都、会場地自治体の費用負担をめぐる課題といった難問に直面しており、こうした状況におけるスポーツ事業による復興支援の原点とは何かについて、さらに考察を進めた。スポーツ事業におけるトップダウンの意思とボトムアップの意思の結節点として、どのような例示ができるのかを追求した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年1月刊行の単著『スポーツと震災復興』後は、地域スポーツ事業が当該地域の活力向上にどのように寄与するのかを注目して調査兼空に従事した。とくに2020年東京五輪との関係で復興五輪の実際に焦点を当て、最終年度の研究に従事している。
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Strategy for Future Research Activity |
『スポーツと震災復興の』の刊行をもって、本研究課題を完遂したわけではなく、今後も東日本大震災や熊本地震等の大災害における地域スポーツ諸事業がどのように被災地域の復興・再生に貢献するのかについて、現地調査を含む探求が不可欠である。しかし、その後、2020年東京五輪が近づくにつれ、また、東京大会開催をめぐる諸課題(新国立競技場建設問題、エンブレム問題、コスト問題分担など)が噴出した状況に触れ、東京大会をめぐる政府、組織委、東京都、会場地自治体など関係組織間の摩擦と調整、相互協力関係のあり方に関心が移りつつある。東京大会のレガシーと復興五輪を結びつけつつ、組織間関係の焦点を当てた研究に従事していきたい。
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Causes of Carryover |
年度末において図書購入の割引の関係で残額が生じたことを知った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書購入の際の割引額について所属の大学図書館から適切な時期に情報を得て、効率的な科研費の執行に充てたい。
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