2014 Fiscal Year Research-status Report
明治期日本における知識・教養としての古代オリンピックと近代オリンピズムとの交差点
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25350788
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
和田 浩一 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (20309438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田端 真弓 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (60648608)
都筑 真 福山平成大学, 福祉健康学部, 准教授 (40566361)
永木 耕介 法政大学, スポーツ健康学部, 教授 (10217979)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古代オリンピック / 近代オリンピック / クーベルタン / オリンピズム / 嘉納治五郎 / 明治期日本 / ギリシャ史 / 歴史書 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.予備研究で作成した古代ギリシャ史関係の図書リスト(118冊)のうち、新たに7冊を玉川大学および立正大学図書館他で収集し、確認済みのものは計116冊(98.3%)となった。これにより、史料収集作業をほぼ終えることができた。 2.明治初期に刊行された西村茂樹『泰西史鑑』(1869-1881年)の翻訳過程を検討し、この記述が、Theodor Bernhard Welter Year(初版は1826年、今回は1851版を使用)の抄訳である Handboek voor de algemeene geschiedenis voor gymnasien en opvoedingsgestichten (1835) の翻訳であることを明らかにした。 3.中馬庚「校風と運動家との関係を諭して京都遠征に及ぶ」(『校友会雑誌』1894年)は、大学を団結させる運動部による対外試合の意義について述べる中で、ギリシャ国内を物心両面でつないでいた古代オリンピックの社会的な機能に注目していたことを明らかにした。 4.北水生「運動会の歴史及種類」『少年世界』(1895年)は、単なる欧米の模倣ではないスポーツの自国化を認識する中で、古代オリンピックを理解しようとした。これらの記述は体育奨励のために古代オリンピックの史実を用いた体操伝習所教授リーランドによる説明とは、明らかに性格を異にするものであると結論づけた。 5.前出の北水生による記事についてさらに、体育・スポーツの対立項の存在(文弱、柔弱ほか)と学生によるスポーツマンシップの解釈の経緯を、上記資料を読み解く文脈に加えることの有効性について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究2年目は、最終目標達成に向けて設定した3つの課題のうち、1)日本における「古代オリンピックの知識」のルーツの解明と、3)明治期の「古代オリンピックの知識」の系統的な整理に重点を置く計画を立てた。 1)については「研究実績の概要」に記したように、未確認史料の収集をほぼ(98.3%)達成できた。また、昨年度に『西洋史記』(1870年)のフランス語原典・版・発行年を特定したのに引き続き、古代オリンピック関連記述を含む日本で最も古い文献だと思われる西村茂樹『泰西史鑑』(1869-1881年)の翻訳過程を検討し、この書のオランダ語原典・版・発行年を特定することができた。 3)については、明治期雑誌に記された古代オリンピックがどのような文脈で使われているのかを分析した。その結果、著者(= 学生)たちは古代オリンピックの社会的な機能に注目したり、あるいはスポーツの自国化の一つのモデルとしてこれを認識していたことが分かり、健康増進に向けた体育奨励のために古代オリンピックの史実を用いた体操伝習所教授リーランドによる説明とは、明らかに性格を異にするものであることが判明した。 しかし、課題2)( = 高等教育機関における「古代ギリシャ史」の位置づけ)については、十分な手がかりを得ることができなかったため、現在までの達成度を「(3)やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高等教育機関における「古代ギリシャ史」の位置づけの確認作業を確実に進めるため、明治初期の学校体育史を研究テーマとする体育史学会の会員に分担者を依頼し、この作業を進めるために有効な方法論や史料収集に関する有益な手がかりを得る。 2.『新編希臘歴史』(1893年)の序を、アジア初の国際オリンピック委員会委員に就任した(1909年)嘉納治五郎が書いていることが分かった。この記述内容を手がかりに、体育の振興に携わった当時の知識人による古代ギリシャ史(古代オリンピック)理解の一端を解明する。 3.古代オリンピックに関わるクーベルタンの言説を、国際オリンピック委員会の図書館他で収集するとともに、彼が古代オリンピックの何に注目しようとしたのかを整理する。 4.明治期の歴史書や体操書、各種雑誌記事他に見られる「古代オリンピックの知識・教養」が、日本の体育・スポーツの普及をどのように後押ししたのかを、オリンピズムにおける古代オリンピック的要素に関するクーベルタンの言説と比較しながら考察する。
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Research Products
(6 results)