2013 Fiscal Year Research-status Report
熱ショック蛋白質を誘導して網膜を保護する分子のケミカルバイオロジー
Project/Area Number |
25350985
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐藤 拓己 岩手大学, 工学部, 准教授 (10300831)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | Nrf2 / Keap1 / 抗酸化酵素群 / 熱ショックタンパク質 / 網膜細胞 |
Research Abstract |
網膜細胞は、光刺激を直接受けるため、酸化ストレスに常に暴露されている。その機能を保護するため、転写因子Nrf2やHSF-1を介した「ストレス応答」を備えている。NRF2を介した抗酸化酵素群の誘導(酸化ストレス)とHSF-1を介した熱ショック蛋白質の誘導(小胞体ストレス)である。NRF2は明らかになりつつあるのに対して、HSF-1は不明のままである。この状況にブレイクスルーを創るためには、網膜細胞にHSF-1を活性化する分子プローブが必要である。申請者らは最近、二つの経路を活性化して網膜を保護する親電子性物質を発見した。NRF2だけを活性化する分子群(D3:オルソ異性体)とNRF2とHSF-1をともに活性化する分子群(D1:パラ異性体)を分ける、最も基本的な性質が、特異的なシステイン残基への結合性にあることを、化学的な観点と生物学的な観点の両面から検証した。 1.化学的な観点から、Cyclic Voltanographyを用いて測定した化合物の酸化還元電位を測定した。その結果、転写活性化と化合物の酸化還元電位が非常によく相関することを見出した。 2.生物学的な観点とは、NRF2やHSF-1が調節する転写調節領域(AREやHSE)の活性化と、抗酸化酵素や熱ショック蛋白質の誘導がこれらの分子群の化学的な性質と完全に相関していることを証明した。 現在細胞レベルの実験結果を受け、ACS Chemical Neuroscienceにfull paperを投稿準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.創製分子がNRF2とHSF-1を活性化するメカニズムを明らかにしたこと(平成25年度)。 D1とD3のストレス応答の活性化の差異は転写因子NRF2とHSF-1の調節蛋白質KEAP1とHSP90への結合性の相違が大きな理由のひとつである。申請者はこの結合性の差異は親電子性(すなわち電子の奪われやすさ)ことに由来すると考えているのでこれを証明した。すなわちCyclic Voltanographyを用いて化合物の酸化還元電位がAREやH SEの活性化と相関していることを証明した。 2.細胞レベルの実験(平成25年度)ヒト網膜由来のARPE-19細胞を用いて、網膜細胞においてD1及びD3がNRF2及びHSF-1を活性化して酸化ストレスから保護することを証明した。1)ARPE-19細胞を用いて、細胞死の抑制作用及び細胞毒性を測定した。2)RT-PCR解析によって発現される遺伝子セットを同定する。これにより化合物がKEAP1/NRF2経路及びHSP90/HSF-1経路を主に活性化することを証明した。3)細胞死の抑制作用の細胞内カスケードを同定する。転写エレメントAREおよびHSEの活性化、抗酸化酵素群および熱ショック蛋白質の発現、グルタチオンの増加に注目して解析を行った。4)薬理学的にグルタチオンの増加を介して細胞死抑制を誘導することを証明した。未だ完了していないのはKeap1及びHSP90の特異的システインへの結合活性を直接LC-MSで証明することであるが、現在その実験が進行中で次の論文には報告する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度において細胞レベルの実験はほぼ完了し、論文をACS Chemical Neuroscienceに投稿準備中であるので、26年度この論文を採択されることがまず大きな目標である。また25年度にやり残したLC-MSを用いた実験を行い、システインへの結合性と酸化還元電位と相関していることを証明する。 さらに網膜変性の動物モデルに実験の主力を移し、細胞レベルで得た実験結果を動物レベルで証明することが26年度に行うことである。
|