2015 Fiscal Year Annual Research Report
時間の不確実性が行動選択に与える効果とそのニューロン活動基盤
Project/Area Number |
25350992
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水挽 貴至 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60463824)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 時間割引 / 不確実 / 報酬 / 変動時隔 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルに対し、事象発生までの遅延時間が、確実な場合と不確実な場合の二つの選択肢を選択させる課題の訓練を行った。この課題では、遅延時間±数10%後のどこかの時点で報酬が与えられる選択肢を2つ用意し、一方を選ばせる。遅延時間と、時間変動量は各々4種類設定したので、計16種類の選択肢がある。このうち2つを無作為に選んで提示し、サルに一報を選ばせる。しかしサルはこの課題を学習できず、選択肢の種類を減らす、遅延を短くする、選択肢の左右位置を固定する、など種々の変更を行い課題の難易度を下げたが同様であった。 Herrnsteinが60年代にハトを用いて行った類似の実験では、変動時隔選択肢を2つ提示すると、報酬獲得頻度が高いほうの選択肢を選ぶ確率が高まったとされる。本実験と結果が異なった理由として、動物種ごとに求められる認知機能の違いがあるためではないかと考えた。集団の中の序列の認識や個体識別をはじめ、社会性に関する認知機能においてはサルのほうがハトよりも優れていると思われるが、本実験に要求される能力は、動物の採餌行動と密接に関係している可能性がある。主に菜食性のサルにとって餌場となりうる地上の樹木は固定されている。一方、上空から報酬探索を行うハトは、留鳥であるとはいえ、地上を広く鳥瞰し採餌行動をおこない、地上環境の不確実性を伴う変化に直面し続けている。こうした違いが課題の学習に影響を与えた可能性があると思われた。 一方、どちらの選択肢も固定時間であれば、遅延の短いほうを選ぶ、という学習には成功した。また報酬量の違いについても学習することができた。スケジュールと単純遅延とでは報酬の時間割引モデルが異なるという研究者もおり、すでに得られているスケジュール選択行動との違いを検証する実験に移行することで、本実験の実験環境や、実験で得られた所見を今後有効に扱うことができると考えた。
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