2013 Fiscal Year Research-status Report
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25350993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯高 哲也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324366)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | fMRI / 脳賦活検査 / 情動 / 動画刺激 / 扁桃体 / 共感性 / 前頭前野 |
Research Abstract |
本研究では日常的にしばしば遭遇する、自然な映像刺激で感情価の高いものを選んで被験者に呈示した。それにより日常生活に近い自然な感情が惹起された状況を作り、機能的磁気共鳴画像(fMRI)による脳賦活検査を行った。また感情生成の前後で安静時スキャンを行い、感情がDefault Mode Network(DMN)の活動に変化を与えるかどうかを調べた。 今年度は、主に楽しさや笑いの感情を対象とした実験を行っている。コメディ映画を約8分間見ている間にfMRIを撮像し、被験者の面白さの評定に合わせて脳活動が変化する領域を同定した。21名の健常被験者のグループ解析では、被験者の面白さの評定が上昇するにつれて内側前頭前野と扁桃体の活動が上昇することが分かった。また同じ映画を見ている時の視線の位置を計測したところ、視線が画面の人物の顔や胴体にある場合に面白さが強くなっていることが分かった。 さらに、別被験者20名を用いて対照実験を行った。ここではモザイク処理を行った映画を示し、決められた反応ボタン(1~4)を押している時にfMRI実験を行った。この時の反応ボタンは、映画を見ていた被験者で最も多い反応を選んだ。その結果では、反応の種類と相関する脳領域は認められなかった。しかし実験群と対照群を比較すると、実験群で有意に活動が高い領域は内側前頭前野であった。これらの結果から、面白さの感情と最も関連する脳領域は内側前頭前野であると推測された。 また感情生成前後で撮られた安静時fMRIの結果では、前後で脳領域間の機能的結合性が異なっている可能性が示された。例えば面白さの評定と関連した内側前頭前野の信号値と相関する領域は、感情惹起する前にはDMN領域に認められた。面白さの感情を惹起した後では、この領域間の結合が有意に低下していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の大きな目標である、自然な映像で惹起させた感情による脳内活動の変化をfMRIで調べることは達成できた。得られた内側前頭前野の結果は、従来のユーモアを主題とした脳画像研究と大きくは異ならないものであった。さらに新奇な発見としては、扁桃体の活動が面白さの評定と関連していたことが挙げられる。これは画面に映る人物の顔やしぐさなどから誘発された可能性があった。そのため追加して眼球運動計測を行い、面白い場面では映像のどの部分を見ているかも詳細に検討した。現在は、課題前後での安静時fMRIデータの解析を行っている。これらの結果を統合して、面白さの脳内機構についてモデルを提唱することができるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で得られている内側前頭前野の活動と面白さの関連について、来年度前半の国際学会で発表する予定である。感情生成前後の安静時fMRIデータの解析は、通常の方法からIndependent Component Analysis(ICA)を用いたデータ駆動型解析に変更して続けている。これについて有意義な結果が得られれば、来年度後半の国際学会への演題応募を考えている。また映像を見ている間にボタン押しなどの反応をさせずにfMRI計測を行い、その結果を相関解析やICAを用いて解析することも予定している。この結果からも類似した結果が得られれば、面白さと内側前頭前野の仮説を支持する重要な所見となる。同時に拡散テンソル画像を撮像し、関心領域を結ぶ神経線維束を画像化することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は良好な実験結果は得られたが、総合的なまとめや既報との関連を含めた考察が不十分であった。そのため学会発表を見合わせたことから、旅費分が未使用であった。 成果発表用の旅費の一部として使用する予定である。
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