2014 Fiscal Year Research-status Report
HIV感染症に対してレジリアントな社会の知識・制度・倫理に関する研究
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25360011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西 真如 京都大学, グローバル生存学大学院連携ユニット, 准教授 (10444473)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HIV感染症 / エチオピア / ケアリング / 複合的な健康問題 / 保健政策 / 政策の質 |
Outline of Annual Research Achievements |
エチオピアのグラゲ県において聞き取り調査を実施したほか、国際学術集会において3回、国内学術集会・研究会において2回の研究報告を行った。委細は次のとおりである。 (1)エチオピアのグラゲ県において、現地のHIV陽性者団体のスタッフに対して聞き取り調査をおこなった。また前年のアンケート調査で、地域のHIV陽性者の中には心身に障害を抱えている者がおり、HIV治療だけでは生活の質の改善が困難であることが明らかになったことを踏まえ、グラゲ県で障害問題を担当している労働・社会問題局のスタッフから、同県の障害政策について聞き取り調査をおこなった。加えて、HIVや障害の問題を地域社会におけるケアリングの文脈において捉えるため、グラゲ県農村の住民に対してケアリングに関する聞き取り調査を実施した。 (2) 国際人類学民族科学連合中間会議において、グローバル・ヘルスの展開やエチオピアにおけるHIV介入といった文脈におけるHIV不一致カップルの経験に関する報告を行った。またオクスフォード円卓会議健康・看護・加齢・栄養部会において、複合的な健康問題を抱えたHIV陽性者の生活の質という観点から、エチオピアの保健政策を評価する内容の報告を行った。また米国アフリカ学会において、エチオピアでHIV陽性者として生きる女性のライフストーリーを「正義」と「ケア」というふたつの倫理概念に照らして分析する内容の研究報告を行った。 (3)国内の研究会においては、エチオピアにおけるHIV介入が公衆衛生上の成功を収めた反面、HIV陽性者の運動を支える社会的つながりの維持が困難になっている状況について報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
過去2年間の研究では、HIV感染症に加えて障害や社会的孤立といった複合的な健康問題を抱えた人々に対するケアリングの問題を取り上げるなど本研究の枠組みを深化させる重要な進展があった。また本年度は、その成果を複数の国際会議で報告したことから、本研究課題は当初の計画以上に進展していると言える。なお業績の上で本年度は雑誌論文が0件となっているが、3回の国際学会発表で3本のフルペーパーを提出したことから、研究上は大きな進捗があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
複合的な健康問題を抱えたHIV陽性者の生活の質について、追加の聞き取り調査およびアンケート調査を実施する。またHIV陽性者の生活の質を維持するためのケアのあり方について、英文および和文の論文を執筆するとともに、公開講演等をおこなう。
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Causes of Carryover |
研究上の必要に応じて有効に経費を使用することに努めたところ、旅費およびその他の経費支出が当初の予定よりも多くなり、物品費と人件費・謝金は当初予定よりも少ない結果となり、全体として若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は本事業の最終年度にあたるため、特に慎重に計画を立て有効に経費を使用したい。
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Research Products
(5 results)