2014 Fiscal Year Research-status Report
ウルグアイのポスト移行期正義における記憶闘争とその政治利用
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25360014
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
内田 みどり 和歌山大学, 教育学部, 教授 (10304172)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 移行期正義 / ポスト移行期正義 / 歴史的記憶 / ウルグアイ / 2つの悪魔説 / 軍政期人権侵害 / 失効法 / ウルグアイ政党政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は8月~9月にかけて約2週間の現地調査を行ない、10月の大統領・両院選挙について、現地研究者・ジャーナリストへインタビューを行った。拡大戦線の副大統領候補に元ゲリラの息子ラウル・センディックが、コロラド党の大統領候補にクーデターの原因を作った大統領の息子のボルダベリーが、国民党の大統領候補に保守派の御曹司ラカジェ・ポウが選ばれ、またウルグアイにも強制失踪の問題があったことを明らかにしたヘルマン事件の当事者マカレナ・ヘルマンが拡大戦線から下院議員に立候補(当選)するなど、歴史的記憶の観点からも興味深い選挙であった。選挙では拡大戦線が勝利し、政権は3期目に入ることとなった。また、現地調査では軍政期人権侵害の訴追に熱心だったが民事部に配置転換されたモタ判事にインタビューすることができた。 バスケス新大統領は軍政期の強制失踪者に関する真相究明にひきつづき取り組む姿勢だが、元ゲリラで「この問題は終わった」と述べて被害者家族に批判された前国防大臣のウィドブロが留任している点が真相究明にどのような影響を与えるかが注目される。 それぞれに興味深いバックグラウンドを持った候補たちが戦った(タバレ・バスケス自身も軍政期のサッカー大会で会計責任者を務めた過去がある)国政選挙の分析は、2014年度の日本国際政治学会ラテンアメリカ分科会で報告ののち、2015年6月発行の『ラテンアメリカ・レポート』で論考が掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は国政選挙の分析に集中したため、最高裁の思想的性格や軍政期における立場、2つの悪魔説やクーデターの原因などに関する最近の歴史研究の動向などについて、現地で収集した資料の分析が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ラテンアメリカのポスト移行期正義・歴史的記憶にかんする先行研究を整理し、時間の経過とともに人権侵害に関するとらえ方・記憶がどのように変化したのかを明らかにする。 2.5月に地方選挙に関し、約1週間の短期現地調査を行う(学内の競争的資金による)。 3.ウルグアイ最高裁の保守化に注目し、軍政期から現在までの最高裁の軍政期人権侵害に関するスタンスを分析する。 4.人権侵害の被害者ではあるが元ゲリラとそれ以外の被害者の間にある軍政期の歴史解釈の違いを、ウィドブロと被害者家族の紛争から読み解く。
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Causes of Carryover |
現地調査の旅費(おもに航空運賃)が予想より安かったこと、研究テーマにかかわる洋書が予定していたより発行が少なかったことや予算執行期限までに発行されなかったことなどで、次年度使用額が生じてしまった。次年度に回した予算は、洋書の購入などに充てる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に洋書の購入に充当する。
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Research Products
(2 results)