2014 Fiscal Year Research-status Report
中国東北部における韓国系独立運動関連史跡の観光地化に関する研究
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25360029
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐々 充昭 立命館大学, 文学部, 教授 (50411137)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金佐鎮 / 徐一 / 青山里戦闘 / 渤海 / 東北工程 / 朝鮮族 / 抗日独立運動 / アナーキズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主に中国の黒龍江省内にある韓国系独立運動関連史跡と韓国内にある金佐鎮関連史跡に関する現地調査を行った。2015年7月から8月にかけて十日間にわたり、中国黒龍江省内の海林市にある韓中友誼公園、山市の金佐鎮関連史跡、寧安市の大イ宗教総本司跡地と渤海関連史跡、牡丹江市の旧掖河監獄跡地を調査した後、ハルビン市内において、侵華日軍731部隊罪証陳列館、ハルビン駅構内の安重根義士記念館、黒龍江省博物館、東北烈士記念館などの調査を行った。また、2015年11月に韓国忠清南道洪城郡において、金佐鎮将軍関連史跡(生家、祠廟、記念館、銅像、記念碑)に関する調査を行った。 このような現地調査を行うと同時に、植民地期において間島地方で展開された青山里戦闘に関する文献調査を行い、その成果として、朝鮮史研究会関西部会2014年度7月例会において、「朝鮮近代史における<忘れられた>記憶-青山里戦闘における大イ宗教徒・徐一と金佐鎮の活動をめぐって」という題目の研究報告を行った。 また、韓国の圓光大学校で開催された「グローバル時代韓国的価値と文明研究」第4次国際学術大会において、「趙素昴の大同思想とアナーキズム-『六聖教』の構想と『韓薩任』の結成を中心に」という研究報告を行った。この報告において、中国領内における朝鮮民族独立運動の展開過程において、右派民族主義系列の抗日独立運動が左派系の抗日パルチザン闘争へと変化し、さらに中国と朝鮮の抗日独立運動家たちを連結する接点としてアナーキズム思想が重要な役割を果たした事実を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度(平成25年度)は、主に延辺朝鮮自治州内の韓国系独立運動関連史跡と吉林省・遼寧省内の高句麗・渤海関連史跡を中心に調査を行った。今年度(平成26年度)は、前年度に行った現地調査の成果を踏まえて、中国黒龍江省内における韓国系独立運動関連史跡の調査を行った。 黒龍江省は吉林省に次ぐ朝鮮族集住地域であり、朝鮮族の援助を受けながら韓国系独立運動関連史跡の復元が積極的に進められている。その代表的なものとして、金佐鎮将軍関連の史跡地があげられる。金佐鎮は大韓独立軍の司令部総司令官をつとめ、抗日独立闘争史上、最大の戦果をあげた青山里戦闘を主導した英雄として評されている人物である。1999年には韓国国内で社団法人金佐鎮将軍記念事業会が発足したが、同事業会は韓国国家報勲処の援助を受けて、金佐鎮将軍の活動と縁の深い黒龍江省海倫市を中心に金佐鎮関連史跡の復元整備を積極的に推進している。2007年には同地に韓中友誼公園を開園し、金佐鎮将軍の事蹟を讃える抗日武装闘争歴史館が設けられた。 今年度は、これら中国国内に造成された金佐鎮関連史跡に関する現地調査をほぼすべて行うことができ、特に中国現地において金佐鎮関連史跡を実際に管理している社団法人金佐鎮将軍記念事業会の担当者から直接インタビューを行った。さらに、韓国国内で整備された金佐鎮関連史跡の調査を行うことによって、韓国と中国における金佐鎮関連史跡の展示方法の違いに関する分析を行い、中国国内における韓国系独立運動関連史跡の顕彰方法に関する特質について確認をした。 以上のように、平成26年度においては、当初予定していた研究計画を遂行することができ、本研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度である平成27年度においては、これまで中国および韓国内で行ってきた現地調査の成果を論文の形式でまとめあげる。現在のところ、特に社団法人金佐鎮将軍記念事業会の活動及び中国内の金佐鎮関連史跡に関する調査の成果として、「青山里戦闘と大イ宗教―北路軍政署総裁・徐一の活動を中心に」と「現代韓国における青山里戦闘の顕彰-金佐鎮将軍記念事業会の活動を中心に」という論文を朝鮮史関連の学術雑誌で発表する予定である。これらの論文を通じて、戦前の中国国内において実際に戦われた青山里戦闘の記憶が、現在の東アジア情勢の中でどのように顕彰され、かつ観光地化されているのか具体的に明らかにする。 その他、平成27年度は、次の二つの研究課題について再度調査を行う。まず、第一は中国国内における安重根関連史跡に関する調査である。これに関しては、平成25年度に大連市にある旅順監獄舎跡地(「旅順日俄監獄旧址」)の調査を行い、平成26年度にはハルビン市にある安重根義士記念館の調査を行った。しかし、伊藤博文を暗殺した安重根に関する歴史顕彰の仕方は、東アジア三国(日本・韓国・中国)における外交関係や政治情勢の在り方に伴い、毎年大きな変容を余儀なくされる。戦後70周年を迎える節目の年である平成27年度においても、日韓・日中・中韓関係の在り方が最も先鋭化してあらわれる安重根関連史跡の調査を再度行う。 第二には、中国の「東北工程」に関する文献調査と中国東北部における高句麗・渤海に関する現地調査を行う。この作業を通じて、中韓間において最も深刻な問題となっている東北アジア古代史をめぐる歴史認識の差異が、中国国内における韓国系独立運動関連史跡の観光地化にどのような影響を及ぼしているのか具体的に考察する。
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Causes of Carryover |
今年度は文献調査のための資料(中国語と韓国語を含む)を多数購入する予定であった。しかし、今年度は現地調査を優先させたために、資料の購入を当初予定していた通りには行うことができず、結果として物品費に差額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、今年度予定していて購入ができなかった文献調査のための資料(中国後と韓国語を含む)を購入する。また、研究の最終年度である次年度は、中国及び韓国における現地調査を複数回行う予定であり、旅費の不足分としても使用する予定である。
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Research Products
(3 results)