2013 Fiscal Year Research-status Report
分析哲学とドイツ観念論の連携およびそのグローバルな意義
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25370018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入江 幸男 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70160075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 意味の全体論 / 価値実在論 / ブランダム / フィヒテ / 社会構築主義 / ナショナリズム / Trasculturality |
Research Abstract |
(1)今年度の計画の1つは、ブランダムのプラグマティックな推論主義の意味論とドイツ観念論の関係を解明することであった。これに関しては、①ヘーゲルに先んじてフィヒテが意味の全体論を主張していることを明らかにするとともに、ブランダムのドイツ観念論理解の修正を提起した。②後期フィヒテの論理学研究の特質を解明して、フィヒテの推論理解がヘーゲルの理解と似たものであり、フィヒテもまた知が判断ではなく推論という形式をとると考えていきたことを示し、フィヒテの中にも推論主義を読み取ることが可能であることを示した。③フィヒテによるスピノザ批判を明らかにした。(これらはアメリカで出版予定の論文集、および日本で出版予定の論文集、および雑誌『思想』に発表した。)(2)今年度の計画の2つ目は、ブランダムのコミュニケーション理解の文化間翻訳への適用を試みることであった。これについては、①従来のナショナルな文化が社会的に構築されたものであり、これが近代社会の自己反省的な構造に由来するという認識を、グローバル化そのものやそれによる文化の変容にもそのまま適用し、これらもまた近代社会の自己反省的な構造に由来するものであることを指摘した。②コミュニケーションの可能性を、グローバルな間主観性ではなく、パースペクティヴの転換として捉えるというブランダムのアイデアは、文化を記述概念ではなくて、操作概念として捉えるヴォルフガング・ウェルシュのTransculturality論に類似していることが分かった。(これについては、ゲッティンゲン大学で開かれた研究会で発表した。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィヒテの意味の全体論とフィヒテの論理学についての研究は予期した以上に進んだ。 また、まだ論文にはなっていないが、グローバル化による文化の変容および文化間理解についてのアプローチ方法についても非常にえるものがあった。ただし、これについての論文執筆や発表準備に時間が取られたために、ブランダムの著作の読み直し作業は遅れているので、今後取りもどした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ブランダムの著作の読解作業に力を入れて遅れを取り戻すとともに、ブランダムの推論主義意味論を、問答論的なアプローチによって発展させ、問答論的意味論をまとめたい。ただし、このような計画の追加にも関わらず、当初今年度の計画としていた、マクダウェルの価値実在論と社会構築主義の比較研究についても研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年8月にアテネで開催された世界哲学会に発表を予定していたが、本務校での所用のために参加できなかったので、その経費が残った。 2015年4月にアメリカとドイツから併せて10名程度の研究者を招いて国際会議を開催する予定であり、そのための経費に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)