2016 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Origin of Relativism in Ancient Greece
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25370036
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中澤 務 関西大学, 文学部, 教授 (10241283)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 相対主義 / ソフィスト / プロタゴラス / 人間尺度説 / ノモスとピュシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代において重要な役割を果たしている相対主義の歴史的起源を、新たな視点からのアプローチを通して解明することにある。そのために、本研究は、紀元前5世紀のギリシアのソフィスト・プロタゴラスの相対主義思想に注目し、「人間尺度説」を中心とする彼の思想全体の総合的な再解釈をおこなうとともに、彼を中心として展開された紀元前5世紀の相対主義思潮全体について、新たな評価を提示することを目指す。 平成28年度は、これまでの一連の基礎研究における最終段階である「基礎的研究3」の研究のまとめの作業を実施した後、最終的な「総合的研究」を展開し、研究全体のまとめをおこなった。 「基礎的研究3」(紀元前5世紀の相対主義思想にプロタゴラスが与えた影響をめぐる研究)では、いわゆる「ノモスとピュシスのアンチテーゼ」の問題を中心に、当時の民俗学的論争や、医学思想、政治思想、弁論術などの多様な論争の文脈を検討し、紀元前5世紀の相対主義思想の全体像を明らかにすると共に、そのなかにプロタゴラスの思想を位置づける作業をおこなった。今年度における具体的研究としては、①ヘロドトスの思想における異文化理解の問題を、彼の民俗学的記述の分析や、医学思想との関連のなかで考察するとともに、さらに、②プロタゴラスの人間尺度説に対する研究史を分析し、そこに含まれている相対主義の思想の内実を分析する作業をおこなった。 「総合的研究」(相対主義の歴史的起源をめぐる新しい解釈の提示)については、これまで4年間にわたり展開してきた「基礎的研究1」「基礎的研究2」「基礎的研究3」の研究成果を再度ふりかえり、全体としての解釈をまとめる作業を実施した。また、研究成果の一部を、プロタゴラスの人間尺度説をめぐる総合的な研究として論文にまとめ、公開した。
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